中国の統一、分裂など歴史的変遷を前回は唐時代まで紹介してきました。これ等は簡略ではあるが日本の世界史紹介書物や学校の教科書でも確認できるが、その時代時代に日本や朝鮮半島を当時大陸側はどのように認識していたかまでは、紹介していないので、もう少しお付き合い方お願い致します。
前回までの紹介の中で、台湾に対して大陸側は如何に認識していたか、紹介漏れがあったが、隋王朝以前は夷洲と呼んでいたが、これは中国の東方に存在するが、よく事情の分からない「エビスの住む土地」との認識であった。隋朝になると「琉求」との認識になったが、これは沖縄のことではなく、台湾に就いてです。沖縄に就いては当時はまだその存在を認識していないとしている。尚13世紀の元朝時代になると「琉球」と「キュウ」の表記が求める「キュウ」から球の「キュウ」に変化している。明時代になり沖縄を「琉球」と呼称・認識し冊封体制に準ずる扱いになると、台湾に対しては「小琉球」と呼称し、何故かその後、中国の東方に住む蛮族の地を意味する「東番」との呼称に変わった。清朝に至り台湾との呼称になったが、完全なる統治とは言い難かった。それでは中国大陸に就いて、唐朝以降を紹介しましょう。
1,    唐朝が崩壊すると「五代十国」時代(AD907-960)となった。但し漢民族が支配する土地は現在の1/4程度でその他は南方の大理王国、その西はチベット、更に西北はウイグル族の前身、北はモンゴルや満州族の前身等の支配地域だった。朝鮮半島に就いては「高麗(コウライ)」の領土としているが、その版図は現在のピョンヤンより少し北側までとしている。日本に就いては首都を京都の平安京と記し、北海道には毛人の土地とする他は領土と見なしている。
2,    遼(916-1125)、北宋(960-1126)、この時期はチベット及びモンゴル族の版図の拡大が特徴的、又独自の文字を持った西夏(現在の寧夏回族自治区)が急成長した時代でもある。日本に就いては北海道からも毛人との記述がなくなり、日本の一部になったとの認識を示している。金(1115-1234)、南宋(1127-1279)時代はモンゴル族の支配地が南下しているのが特徴である。北宋時代は北限が北京や大同辺りだったのが、南宋となると淮河や河南省南部辺りが北限となっている。
3,    元時代(1279-1368)、チンギスハンに始まりフビライハンに完成した大帝国であり、北はロシアの大部分を含み、西はカザフスタンやウズベキスタン辺りまで支配した。日本への「蒙古襲来」もこの時期の初め頃であり、ベトナム侵攻では潮の干潮を利用したベトナム側の作戦で失敗したのもこの時期である。中国全土が万里の長城の建設などで長年守られてきたが、遂に異民族支配となり、それへの復讐は現代まで続き、内モンゴル自治区は名ばかりとなり、現在人口2,400万人の八割は漢民族となっている。
4,    明朝時代(1368-1644)、西は現在の国境線辺りまで後退したが、ロシアのシベリア地区や極東地区は明の版図に入っている。朝鮮半島はほぼ現在と同じで、鴨緑江及び豆満江以南を李氏朝鮮が支配としている。
5,    清朝時期(1644-1911),満州族が支配し、近代まで続いたが、外モンゴル(現在独立国のモンゴル国)やロシアの極東地区も版図内となっている。日本に就いては、尖閣諸島に対して釣魚台(福建省)と記しているが、1968年国連の海洋調査船がこの付近の海底には石油や天然ガスがあるようだとの調査結果を発表するまでは、日本領と認めていたのが変化している。この歴史地図の発行が1991年10月からであるので、中国政府の方針変更に伴い急遽領有権を表示し始めたことになる。1905年日露戦争にロシアが敗戦したことにより、旅順大連租借権が日本に移ることになったと記し、台湾に就いては、1895年に全省日本に割譲されたと簡単に記してある。内モンゴル、青海、チベットの変動はいずれも小さく、特記するほどではないと説明。清朝末期には何故かシベリア極東地区がロシアに編入されたことに一切言及されていない。
6,    中華民国時代(1912-1949)殆ど、現在の版図通りであるが、1945年9月には抗日戦争の勝利により、日本に占領されていた台湾が我が国に返還されたと記し、同じく“満州国”と偽称されて、日本に占領されていた地域は東北三省として原状復帰したと記す。
朝鮮半島に就いては日本への併合の事実は地図上でも解説欄でも一切記載なく、朝鮮半島の鴨緑江及び豆満江以南を只、朝鮮とのみ記して、首都はソウル(三重丸の漢城)のみと記し、平壌に就いては小さな丸で記しているのが意味深長。地図上の台湾には台湾省と記し、尖閣諸島には釣魚島等と記している。

以上の如く中国の歴史は、拡大と縮小、統一と分裂を数えきれない程繰り返してきたが、学校教育での徹底も含めて中国当局により明確に認識(指導)されていることを示している。
 第二次大戦以降沖縄、奄美大島、小笠原諸島等一時的にアメリカの施政権下に入っていたこと以外有史以来国が分裂した経験を有しない、我々日本人は領土保全には特別な対策や努力が必要ないと思いがちであるが、日本の隣国であり文化的にも共通点を多く有する関係にありながら、日中両国の領土意識は全く異なることに留意すべきであろう。

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