中国であれ日本であれ、日本人が中国人を指導育成する場合、大局的な特別な留意が必要であるが、その必要性を十分認識している日本人は少ない。マスコミや日本政府関係者を含めて、中国に対する認識が両極端になっており、バランスが取れていない。中国側も「一衣帯水」とか「同文同種」との言葉に幻惑されて、日本人は自分達の考えや感情が当然分かるはずだとの思い込みがある。2000年来の交流の歴史、明治維新以降の関係、先の日中戦争、反日教育等々、多くの原因があるが、同様の傾向は韓国にもあり、東南アジアを含む他の多くの国々の人達とはまるで異なる。
以上についての解説は暫時保留とし「要諦」として下記十か条に整理してみた。

1.学歴、出身、民族の違いによる差別は一切せず、末端の作業員まで一人ひとりの人格(自尊心)を如何なる時も十分に尊重すること。末端の意見聴取ではトヨタに見習え。
2.仕事効率(生産性)の倍増を目指し、給与や待遇を同業者の2-3割アップを目指す。節約や「もったいない」精神は元々、中国が本場だった。
3.5年後、10年後の自分はどうなっているか、各人が夢を持てるよう道程表を作れ。
  会社発展計画と個人のレベル(職位)や所得向上計画をリンクさせよう。
4.品質向上の基本:5S活動や「品質を作りこむ」運動は、日本での事例ではなく、中国での誰でも分かる事例で以って指導しよう。
5.思い切って任せ、結果責任を問おう。一々指図したのでは責任追及は出来ない。
6.思考力を養成しよう:香港、シンガポール、台湾、韓国が何故“四ヶ小龍”となったか? 自己責任主義と大鍋飯主義(親方日の丸の中国版)の相違を教えよう。
7.積極性の養成:挑戦による失敗を責めず、不作為の無成果や敗北を責めよう(スーパーの国営、民営、外国系の繁盛振りや店員の勤務状態に歴然たる差がある)
8.企業のトップは、戦略(長期、総合的)と戦術(短期、局面的)を混同するな。
戦略の変更では全ての幹部の理解を得よ(同意を得る意味ではない)。
9.企業のトップは、「言行一致」であること。「不一致」があれば、誰も信用しなくなり、面従 腹背となる。又、軽率な発言は不可なり。信賞必罰を含む就業規則は厳守されているか、点検が必要。とかく日本人は「言葉のみ厳しい」と見られている。
10.幹部には、率先垂範を要求し、実態を時々点検すべし。「頭を労するのは幹部で、作業者は体を動かせば良い」と考える、古い考え方の幹部がまだまだ多いのが中国である。

柳沢経歴 http://www.nakatsu-bc.co.jp/komon/komon-2.html
  Mail add. Knhr-yana-@jcom.home.ne.jp