中国は法律とは異なり実質的には共産党独裁国家である(形式的な野党はあるが)ことは、中国に滞在する人であれば先刻ご存知であろう。然し思わぬことからスパイをしたとの嫌疑をかけられる恐れがあるので細心の注意が必要であることは片時も忘れてならない。例えば共産党や中国政府を批判するような言論も反中国言動と見做されることがある。
1、 昔は大きな橋梁、軍事施設、軍人の写真は撮ってはならないと言われた。文革中は私の様に右翼と見做された人間よりも、むしろ日本では左翼と見做された日本人がスパイ罪や反中国分子と見做されて拘留、逮捕された。彼らは共産主義を正しく理解しているとの自尊心から中国人と激論を交わして恨みをかったからである。私はこんな無用な議論はしなかった。本音で語ってくれたと思われ、自由に意見交換した場合でも、何時の間にか当局に通報されることもあると警戒すべきであろう。
2、 仕事上の必要な情報収集にも留意が必要である。公式な会議や商談での情報入手は問題ないが個別な接触での情報入手には特別な留意が必要である。前にも紹介したことがあるが、個別の情報収集では、故意に北京飯店のロビーなど誰からも見られる場所を選んで聴取したものである。私自身拘留はされなかったものの、スパイの嫌疑をかけられて執拗な事情聴取をされたことがある。それは北京郊外にある大きな工場の総工程師と親しくなり、何度も彼の自宅を訪問したこと、設備増強計画の内容を聞いたことが原因であった。通常の商業活動の一環であると主張して、経過など詳細に文書で提出し事なきを得た。日本の知人から、「昔叔父さんが住んでいた北京のある横丁の今の様子を写真に撮ってくれ」と依頼され、タクシーで行ったことに対して、三日後に外国人受け入れの窓口の人(日常の生活面でサポートしてくれていた人)から事情聴取されたこともある。上記2件はタクシーの運転手が通報したとしか思えない。中国当局のスパイや情報収集ルートや方法は多岐にわたるとの認識も必要である。
3、 最近カナダで中国を代表する通信機器メーカーであるファーウェイ(華為)技術の副会長兼最高財務責任者の孟晩舟女史が、アメリカの要請により逮捕された。名目上は子会社との関係で虚偽の申告があったとのことであるが、実態はファーウェイによるスパイ容疑であろう。同様嫌疑で中国通信機器大手の中興通訊への部品供給を昨年4月より禁止した為、同社は経営不振に陥っているとのこと。一方中国政府はカナダ人の元外交官であるコブリグ氏を「中国の国家安全を脅かす活動に従事した疑いで、10日から北京国家安全局が法に基づき調べている」と中国のマスメディアでも報じている由。これは孟容疑者逮捕に対する報復の可能性が大と思われる。
4、 上記には、報道されることはない深刻な背景があると思うので下記しよう。中国では政府が特に保護して育成強化しようとしている企業と官僚は癒着しており、手段を択ばずその企業を守ろうとするであろう。スマホやパソコン等IT技術の基礎になっている電子部品の製造技術は、日本とアメリカが握っているので、日米からの供給がないと、威勢の良い中国や韓国の企業も立ち行かない。特に半導体素子の製造設備では日本が世界のトップに君臨している。韓国や中国の一流企業もその国産化に注力しているが、製造ノウハウと併せ道遠しであり、その情報取得には手段を択ばない。随分前のことだが、2000人の従業員のいた北京の半導体工場の生産量は従業員200人の日本の中小企業の一割にも満たなかった。品質管理面では基礎的考え方自体なかったが!兎も角スパイ問題では中国は二重基準を堅持していることを銘記すべきである。


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