私の幹部教育要諦の第5項では、<思い切って任せ、結果責任を問おう。一々指図したのでは責任追及は出来ない。>と述べました。
 当内容については、「合点がいかぬ!」とお思いの方も相当多いと推察されます。「細かく説明、指示しないと、仕事がいい加減になる。責任感も薄い」と嘆く、日本人経営者や指導幹部は少なくない。然し、中国人幹部や社員からすると、「我々をあまり信じてくれない。問題が見つかった時、指示された通りやったのに、我々の手落ちや努力不足にされる」との不満もある。結果として、多くの日本人は“必要”以上に忙しくしており、残業や休日出勤をしている一方、中国人幹部は勤務中でさえ、油を売っているのも少なくない。
 多くの中国人は、日本人と較べてあまり緻密でなく、周到でもない側面は確かにあり、日本人は「神経質だ!」とか、「ケチだ!」との不満を吐露する言葉は、私自身何度も耳にしている。又、集中力を長時間持続できない傾向もあり、「時々息抜きが必要だ!」と正直に言う者もいた。
 対策としては、やはり思い切って任せ、小刻みな指導や指示は止め、辛抱強く待つ姿勢を保つことが必要です。少しでも上手く行けば褒めたたえ、予想以上であれば激賞することで、彼らに使命感や仕事への喜びが生まれてきます。そうでないと、日本人ばかり忙しくなり、何事に依らず指示を求められ、結果としては工程管理や工場内流通の改善等もなかなか進まず、品質向上や生産性向上にも悪影響があるでしょう。思い切って任せたことに対しては、当然ながら結果責任を問うべきです。
 指示や指導が徹底せず、日本の本社や客先からクレームが来た時、「俺の説明が不十分だった」と関係幹部の前で言うくらいの度量を持ちたいものです。そうすれば、「そうだ!そうだ!」とはならず、言葉で謝るのが嫌いな中国人幹部も、心中では「我々のせいで、申し訳なかった、なんとしても改善しよう」と思わせることになります。

柳沢経歴 http://www.nakatsu-bc.co.jp/komon/komon-2.html
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