中国の改革開放が進展し、実効を上げ始めたのは深圳等経済特区以外では90年代に
入ってからでした。従い私が商社マンとして最後の北京駐在だった1985~1991年の頃は、まだまだ国営企業が経済活動の主要部分を占めており、国営企業を管理する行政機関が、何処にどの程度予算を配分し、何を購入するかの決定権を握っていました。国営と言っても国の省庁が直接管理するのは一部分で、大部分は地方の省・自治区に移管し、更に小規模なら、その下の市や県に管理を移管していました。この基本的構造は今も変っていないが、外資系企業を含む民営企業の比率の増大が、大きな変化点です。

 外資系企業の買付けは主として、投資した外資側企業やその関係企業が調達するので、商社としての顧客開拓、販促活動対象には適していませんでした。従い、販促活動(上)で述べた施策により各省庁とのコネ作り、更に地方政府(自治体)の関係部署を紹介して貰うことが重要な活動になりました。逆に外国企業と関係作りに奔走する中国企業も急増し、我々商社の現地事務所ではその応接に翻弄されましたが、客になりそうとの感触を得ても即断せず、関係官庁の親しい“友人”に意見を求め、更に「百聞は一見に如かず」で、その“潜在的顧客”の工場や研究所を参観するようにしました。そこまで行動すると、かなり情況が分ります。工程の前後関係上無理な、又は無意味な設備を買付けしようとしている場合、更に設備価格を中国産並みに見て予算措置を考えている場合などもあり、行動しながら顧客の選別もした訳です。

 私の経験上承知している分野は、機械設備です。文革前は研究所や大学の研究室が主な顧客である理化学器械を扱い、徐々に工場の生産設備に重点を移して行きました。
生産性や精度のひどい設備、生産管理や在庫管理のひどさには何度も驚きました。例えばテレビ等家電製品に必要な電子部品等、従業員が2,000人も居て、生産量は日本の従業員、100~200人の中小企業の1/10以下と言う事例も沢山ありました。一方部品の規格が不揃いにも拘らず、基板への部品自動挿入設備を「勉強の為」として、実際に購入された事例もある(数十人の作業員が錆取りや足の長さを手作業で揃えた)ので、必ずしも日本的感覚では仕事にならない面もありました。

 現在中国での企業活動の自由化は大きく進展しているので、販促活動も容易になったでしょう。従い“昔語り”に属する話はこの辺にしますが、逆に以前は殆ど考慮不要だった、「与信管理」が大きな問題で信用度が不明の場合は、前金取引にならざるを得ないでしょう。現地調達に関しては、近日中に中国人幹部社員教育シリーズで、参考事例を紹介致しますので、ご一覧下さい。

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 柳沢経歴 http://www.nakatsu-bc.co.jp/komon/komon-2.html
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