中国で長年仕事をし、又中国の歴史を俯瞰して感ずることは、日中両国民は隣国同士でありながら気質を異にしていることです。縄文時代終期から多くの中国人が、現在の浙江省や江蘇省から渡来し、日本民族形成の中核を成したことは、DNA鑑定などを以て考古学的にも証明されています。更に5-9世紀には日本から派遣された使節団や留学生(僧侶を含む)を通じて、幾多の文化を導入し、日本の古代文明の基礎が作られたことは学校の歴史教科書でも教えているところですが、然し近・現代ではむしろ相違点の方が目立つようになりました。
 やはり民族性や国民性は、地政学的に養成されていくと言う点に注目すべきでしょう。以前にも触れましたが、日本が島国であり、歴史上他民族や他国との交流も相対的に少なく、侵略されたりすることが殆んどなかったこと、更に気候は温暖で四季がはっきりしている他、降雨も比較的多く湿度の高い期間が比較的長いことも関係しているでしょう。再度となるが日中を比較しながら例示して見ましょう。
1. 地震、台風、火山の噴火の多い日本では大自然への畏敬の念が強く、自然崇拝信仰となり神道の確立普及へと発展して来たことは間違いないでしょう。その儀式の中の「清める」と言う作法も本来、今流に言うなら感染症を防ぐと言う点から発展したと言えるでしょう。野菜や魚も塩漬けにすれば長期間食用になると言う点も大相撲で力士が取組前に塩を撒く動作になったと言えるでしょう。「清める」は「清潔にする」と言う意味合いもあり、隅々まで清掃する等生活習慣となり、何事にも緻密さを求める日本人気質となったとも言えます。それが生活習慣に留まらず、あらゆる産業活動での品質向上、サービス向上、改善改良に繋がっていることは間違いありません。古代の仏像一つとっても、大陸や半島のものより、洗練されていると感ずるのは、私だけでしょうか?
2. 日本のテレビ朝日が毎週放送している番組に、世界が驚いた日本、「スゴ~イデスネ視察団」と言うのがありますが、多分中国在住の皆さんには衛星TVにはなく、御覧になれないのではないでしょうか?この番組の内容にウソはないと思われますが、上述の如く絶えざる改善改革をする日本人気質、職人気質を見る思いがします。それにしてもナショナリズムをくすぐるとも言える、この番組内容を、左翼的だったテレビ朝日が放送している情況は時代が変わったなとも思わせます。
3. 中国で仕事をして、工程管理、品質管理、更に原価管理に取り組んでいる皆さんには苦労が尽きないでしょう。以前、中国でも蘇州の両面刺繍(子猫のデザインに代表される)や玉器工場での情況等中国での実例を以て指導した方が良いとアドバイスしましたが、中国のGDPが大きく日本を上回ってきている現在では、褒め殺し(捧殺pengsha)も併用した方が良いと思われます。昔日本でもアメリカ向け輸出品の一つに1ドルブラウスと言うのがあり、日本品は「安かろう、悪かろう」と言われた時代があったが、中国も「パクリ文化」とか「安かろう、悪かろう」時代は既に卒業すべき時代に至っており、元々古代文明では日本人は中国人に学んできたのであり、日本人が出来ることが中国人に出来ない訳がない、と指導すべきでしょう。
4. 更に褒め殺しを続ければ、古代に於いては、日本は中国ばかりか朝鮮半島の文化も貪欲に導入,吸収し、更に改善して来たし、近代に於いては欧米の文明を吸収してきた。40万以上の海外企業が存在する現代中国は、吸収するのみだけでなく、改善改良をしてより良いものにしていくべきだと言えるでしょう。
但し、中国全体の状況を日本並みにするのは、やはり無理があると言えるでしょう。気候風土が異なり、一族郎党や知古以外には、気を許さずあまり親切にしない気風は、物的欲望実現に邁進する現代中国の社会的風潮と相俟って、容易には変えられないと見た方がよさそうです。
5. 最近中国からの観光客が急増しており、一部の中国人は社会的マナーが悪く時々ニュースにもなりますが、大局的に考えればもっともっと増加して当然であり、そうすれば実際の日本の情況を自分の目で見て、知ることになり、文字通り「百聞不如一見」となり、真偽不明な或いは誇大な反日教育の諸材料から導かれる日本(人)と実際は異なることが知れ渡ることになるでしょう。
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