日本での一般的基準で見れば、リベートや横領等企業内不正を完全になくすのは極めて困難と先ず認識すべきでしょう。日本には夏のお中元、年末のお歳暮が風俗習慣としてあるように、商取引があればリベートがあり、お役人には何かと心付けをするのが、公然とは認めないが暗黙の常識になっているのが中国です。12年前一年余北京で仕事をしていた時、ホテルから職場まではタクシー出勤をしていたが、ほぼ毎日同じ質問をして一種の世論調査をしたことがあります。タクシー運転手は多くの人々を客としており、社会通だからです。渋滞を避けるため、脇道を通ることが多かったのですが、破損箇所が多くメンテも行き届かず、悪路で往生しました。運転手は異口同音に「施工業者が悪いのではなく、発注元がリベートを要求するので、手抜き工事にならざるを得ない」と言う。更に、社会問題である“汚職問題”に就いて問うと、チャンスがあれば7-80%以上はとか、全てがとか、少なくとも半分以上は、と回答はいろいろでしたが、やはり少なくとも“役得”の機会のある役人や、企業幹部は半分以上が多かれ少なかれ、不正を働いていると見て間違いないでしょう。0.1%以下の日本とは比較になりません。更に、物知り顔の運転手は、「多少なら許せるが巨額の賄賂を受け取るとか、同僚や部下に分け与えず、独り占めする奴が悪党だ」とも言っておりました。この様な環境の中にあっても、不正を最小限に留めることは可能ですので、経験と見聞の中から対処方法を若干列記してみましょう。多少なりとも参考になれば幸いです。

1、先ず日本人トップや経営陣が率先実行することです。中国人部課長に対して厳しく

対処しても、日本人が“過分な謝礼”を受け取り、“独占”していたのでは、極秘裡に悪事が行われるだけでしょう。

2、物事は程度問題でもあります。お中元やお歳暮程度なら見逃すべきでしょう。但し、必ず報告させ、受領した“謝礼”は公平に配分処理させましょう。

3、20年以上も前の北京のことです。毎年税務報告し納税していたが、営業税を2回も遡って追徴されたことがあります。審査に合格していたはずと言うと、前任者に見落としがあったと理由にならない理由を聞かされました。3回目の税務審査前に秘書が機転をきかせて、審査準備をする為の“指南”をお願いしたいと申し出て、一席儲けた上で二人の担当官に茅台酒と若干の小物類(顧客に配る小物類で数千円程度のもの)を渡しただけでしたが、3回目は追徴課税はなしで済みました。

4、親しくしていた某美術大学の教授の件です。ある時彼の自宅を訪問したら、フランスの有名なブランディーやスコッチ等が沢山有り、眺めていると「どれでもいいから一本持って行け」と言う。「学生の父兄が勝手に送り届けてきて困っている、受け取るが成績評価は厳正にしているので、意味ないが!」と言っていた。

5、購買品の両目不足での納入やグレードダウン品の納入も有りうるので、抜打ち検査も時には必要でしょう。

  根本的な対処方法は、会社の利益がそのまま自分の利益に直結すると言う、人事管理制度(人材育成制度、表彰制度、昇進制度を含む)を確立し、実行することでしょう。


柳沢経歴 http://www.nakatsu-bc.co.jp/komon/komon-2.html
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