こんなことを言うと、現在の中国人は信じないが、当時日本人“紅衛兵”と言われながら中国で生活し仕事をしていた私の体験や見聞では間違いない。むしろ、最近の中国よりは、モラルは高かったと言えるくらいである。当時、日本や欧米のマスコミは、否定的側面のみを繰り返し報道していた為、国中が動乱中との印象を与えてしまった。今になって自分達は文革の被害者だったようなことを言う年配者は、中国でも多いが、「小生さえ日本の紅衛兵と言われた異常な時代で、中国の若者の99%以上はみんな紅衛兵だった。被害者だったと言うなら、同時に加害者だったと言うべきではないか」と、言うと彼等は沈黙してしまう。
理不尽な行動や残虐な行為をした紅衛兵は10%未満だったと自信を以って言える。勿論、学校や工場を含め、至る所「大字報」だらけで、「政治学習」が繰返され、
文革初期段階では生産活動等経済面に多大な悪影響を与えたことは間違いない。
然し、中国人はどんな境遇下にあっても、逞しく生活を楽しんでしまう、極めて楽観的な民族だなとの印象を強くした。日本人“紅衛兵”も毛沢東語録を商談の前や集会時に読んだが、「これは正しい」として、深く印象に残り、その後最近に至るまで、中国での職場での指導に引用してきた言葉がある。即ち:
1、毛主席教えて曰く、「仕事とは困難との闘争である」、従って弱音を吐くな
2、毛主席教えて曰く、「婦女子をからかってはならない」、言葉でのセクハラも
不可の意味と理解した
3、毛主席教えて曰く、「農民など大衆のものは、針一本、糸一筋であろうとも取ってはならない。戸板等借りたものは必ず返せ」、極貧状態の解放前でもこうだった。会社や公共のものを大切にせよ、贈収賄等論外と指導した。
 文革中に何度も解放軍駐屯所の見学があったが、ほとんど自給自足していた事と並んで、街中とは異なり清潔で整理整頓がきちんとされていることに感心した。特に共同洗面所で見た、各人のうがいや歯磨き用のコップが、等間隔で柄の部分の角度も一律に並んでいたのが、鮮明な記憶となっている。この件も、5S活動の指導等に利用した。
 多くの中国人は能力の高低に関係なく、強い自尊心を持っているので日本や欧米の事例で以って指導するより、中国での事例、それも特別才能の持ち主や高学歴者ではなく、中高卒業一般人の良い事例で以って指導するのが効果的である。そうでないと、心中「我々の給与は日本人の十分の一以下であり、どうして日本人並みに頑張らねばならないのか?」との反発を抱き、成果に繋がらない恐れがある。次回、もう少しモラル問題を続けよう!改革開放が始まり、80年代になり中国はどう変化し、どう対処されたのか?

柳沢経歴 http://www.nakatsu-bc.co.jp/komon/komon-2.html
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