平成20年度宅建試験

【問 40 宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者でない
Bと建物の売買契約を締結する場合に関する次の記述のうち、宅地建物取引
業法
(以下この問において「法」という。) 及び民法の規定によれば、正しいもの
どれか。
1 Bが契約の履行に着手するまでにAが売買契約の解除をするには、手付の
 3
倍に当たる額をBに償還しなければならないとの特約を定めることができる。
2 Aの違約によりBが受け取る違約金を売買代金の額の10分の3とするとの
 特
約を定めることができる。
3 Bから法第37条の2の規定に基づくいわゆるクーリング・オフによる売買
 約の解除があった場合でも、Aが契約の履行に着手していれば、AはBに
対し
 て、それに伴う損害賠償を請求することができる。
4 Aは、瑕疵(かし)担保責任を負うべき期間として、引渡しの日から2年で、
 つ、Bが瑕疵
(かし)を発見した時から30日以内とする特約を定めることが
でき
 る。

○1 正しい。業者が売買契約の解除をするには、手付の3倍に当たる額を償
  しなければならないとの特約は、買主に有利であるので有効である(宅
地建
  物取引業法
392項、3項)。
×2 誤り。当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の
  額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額
  10分の2を超えることとなる定めをしてはならない(同法381項)。
×3 誤り。クーリング・オフによる売買契約の解除があった場合、宅地建物
  引業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払いを請求す
  ることができない(同法37条の21項)。
×4 誤り。目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、期間についてその目的物
  の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、民法5663
  規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない(同法
40
1項)。
  引渡しの日から2年という点は違反しないが、「瑕疵を発見した時
から30
  以内」を責任追及期間とすることは、民法の「瑕疵を発見した
時から1年以
  内」よりも買主に不利なので定めることができない。

注→ この問題文の解釈は、「引渡しの日から2年で、かつ、・・・」とあるから、
   引渡しの日から2年経過後に瑕疵を発見していなかったら、さら
に、それ
   から瑕疵を発見した時から
30日以内とも読める。そうすると、
責任を追
   及できる期間は、2年以上となるので、正しいとも言えるので
ある。しか
   し、肢1が明らかに正しいので、肢4は誤りとせざるを得な
いが、そうす
   ると、かつ、ではなく、又はとすべきであろう。多くの解
説は、そういうふ
   うに解釈して解説している。私もそうした。

 過去にも複数の特約をして、その一部は有効であるが、一部は無効と
いう
問題が多く出題されている。例えば、平成9年の問題で以下のよう
な問題が
出題されている。

1 「Aが担保責任を負う期間は建物の引渡しの日から2年間とし、Bは、そ
 の期間内に、契約を解除することはできないが、損害賠償を請求すること
 が
できる」旨の特約は無効である。

 この問題は、「引渡しの日から2年間」とい点は有効であるが、「契約を解
除できない」という点は無効である。
 平成20年の出題者もこの契約の一部無効の問題を出そうと考えたかも
れない。しかし、期間の問題を、かつ、でつないでいるので、そういう問題
にはなっていない。
 とにかく、平成20年と21年の宅建業法の問題は、文章が雑なものが多
い。今後本試験の出題者は、過去の問題を参考にするときは、くれぐれも
の点に注意してほしい。
 因みに、契約(特約)の一部が無効の場合、契約全体が無効になるのか、
無効
な特約部分だけが無効になるのかは、当事者の意思等を考慮して、
個別的に判断
される。