平成24年度管理業務主任者試験

【問 6】 請負と委任の異同に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っ
ているもののみの組合せはどれか。
ア 請負も委任も、いずれも諾成の双務契約である。
イ 請負においては、請負人は請負に係る仕事を第三者に行わせることはできな
 
いが委任においては、受任者は委託に係る法律行為を第三者に行わせること
 が
できる。
ウ 請負人は、仕事の目的物の引渡しと同時に報酬の支払いを請求することがで
 きるが、受任者は報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後に報酬を
 請求することができる。
エ 請負は、各当事者がいつでも契約を解除することができるが、委任は、委任
 事務の履行の着手前に限り、委任者のみが契約を解除することができる。
1 ア・イ
2 ア・ウ
3 イ・エ
4 ウ・エ

×ア 誤り。委任は、諾成契約であることは問題ない。しかし、有償なら双務
  契
約であるが(受任者は事務を行う義務を負い、委任者は委任料(報酬)
  を支
払う義務を負う)、無償だと片務契約である。つまり、無償の場合、受
  任者の
みが債務を負い、委任者は何らの債務を負わない。片方の者だけ
  が債務を負
うということ(片務)。設問は、この区別をしていないので、誤り
  である。請
負は、諾成の双務契約である。
×イ 誤り。請負においては、請負人は請負に係る仕事を第三者に行わせるこ
  と
は「できない」のではなく、民法に明文はないが、できると解されている。
  負は仕事の完成が目的であり、仕事が契約通り完成すれば問題がないので、
  特約がない限り、第三者に行わせても問題がないからである。
   委任においては、原則として、受任者は委託に係る法律行為を第三者に行
  わせることが「できる」ではなく、明文はないが、できないと解されている。
  任は当事者の信頼関係に基づいているため、誰が委任事務をやってもいい
  とはいえないからである。ただし、復代理の規定を準用して、本人が許諾し
  場合かやむことを得ない事由があれば、第三者に行わせることができると

  されている。
〇ウ 正しい。請負人は、仕事の目的物の引渡しと同時に報酬の支払いを請求
  す
ることができる(民法633)。ただし、物の引渡しを要しないときは、仕事
  の完成後に報酬の支払いを請求できる(同ただし書)。
受任者は報酬を受け
  るべき場合には、委任
事務を履行した後に報酬を請求することができる(
  法
6482)
   これらはあくまでも民法の規定である。当事者が報酬の支払い時期を別に
  定めれば、これによるのである。
×エ 誤り。請負は、各当事者がいつでも契約を解除できるものではない。契約
  を締結した以上、勝手に解除できるものではない。債務不履行(法定解除)
  や特約(買戻しの特約や手付けによる解除等→約定解除)で解除できる旨
  の定めがあれば、それらを理由に解除できることは別問題である。
   委任は、各当事者がいつでも(履行の着手前に限らない)解除をするこ
  ができる
(民法6511)。委任は特に当事者間の信頼関係に基づいて

  約がなされるので、民法が規定を置いているのである。ただし、解除し
たら、
  後に損害賠償の問題等が発生す場合がある
(2)。判例はいつで
も解除
  できない例外を認めているので注意すること。
 以上より、誤っているものの組み合わせは、アとイ、イとエであり、1と3が正解。

注→当初試験の実施団体は、正解は3のみとしていた。しかし、後に1も正解
  の訂正を出した。誰にでもミスはあるものですが、しかし、特に、この民
法の
  問題は基本中の基本の問題であり(ただし、これが重要な問題とは思わ
ない
  が)、このような問題でミス問題を出し、しかも長い間気がつかなかっ
たことに、
  出題者(全員)のレベルを疑う。すこし本を調べればすぐに分か
ったはずです
  が。ただし、後に誤りを公表し、追加合格者を出したことには、
敬意を表したい。