3 団地共用部分
  2で見た区分所有法66条は、団地について規約共用部分の規定を
 準用する規定はない。したがって、団地においては規約共用部分とい
 うことはない。
  しかし、団地所有者が共用する建物は必要であり、団地共用部分を
 定めているのが、区分所有法67条である。
 ① そこで、一団地内の附属施設たる「建物」(第一条に規定する建
  の部分を含む。)は、「団地規約」により団地共用部分とすること
がで
  きる。例えば、団地の附属施設としての集会所や管理棟が団地
共用
  部分として考えられる。また、団地内の区分所有建物の専有部
分(管
  理室・管理人室)を団地共用部分とすることができる
(区分
所有法67
  条1)

〇 団地共用部分とすることができるのは、「建物」であり、建物ではない
 施設は団地共用部分とすることができない。また、団地共用部
分とする
 ことができるのは、「団地所有者全員の共有に属する建物」
でなければ
 ならない。団地所有者の一部の者の共有に属する建物は、
団地共用部
 分とすることはできない。つまり、団地においては、一
部団地共用部分
 は認められない。

 ② 団地規約で団地共用部分と定めた場合、その旨の登記をしなけ
  ば、これをもって第三者に対抗することができない
(区分所有
67
  1項ただし書)

 ③ 団地共用部分の持分は、規約に別段の定めがない限り、建物(
  建ての場合)又は専有部分(マンションの場合)の床面積の割合によ
  る
(区分所有法673項、141項、4)

 ④ 一団地内の数棟の建物の全部を所有する者は、公正証書により、
  前項の規約を設定することができる。つまり、団地の分譲業者が
  譲前に団地共用部分の定めを公正証書により作成できるとした。

4 団地規約の設定の特例
 ① 団地内の土地又は附属施設が団地建物所有者の共有に属す
  る
場合、共有者全員で、その団地内の土地、附属施設及び専有
  部
分のある建物の管理を行うための団体を構成する(区分所有
  法
65)。そして、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置く
  ことができる(区分所有法65条による準用)
   一般的に団地の規約の設定、変更又は廃止は、団地建物所有
  者及び議決権の各4分の3以上の多数による団地の集会の決が
  必要である。

 ② 区分所有法681項は、「団地建物所有者の一部に属する物
  ついて」、団地で管理できる場合について定めた。本来なら、
これを
  共有する者(棟)単位で管理すべきであるが、一定の手続
きを経て
  団地規約を定めて、団地で管理できることにしたわけ
である。
   第一に、当該団地内の一部の建物の所有者(専有部分のある
  物にあっては、区分所有者)の共有に属する場合における当
該土
  地又は附属施設(専有部分のある建物以外の建物の所有者
のみ
  の共有に属するものを除く。)
(区分所有法6811)
例えば、
  10棟からなる団地で、5棟ずつに分けて敷地が区分
されており、そ
  の間に
10棟全員の共有に属する通路がある場合、
その通路を核
  として
10棟全員の団地が成立する。このような場
合、団地規約で
  敷地全体を管理できることになる。駐車施設等
が、一部の団地所
  有者の共有に属している場合等も同じように
団地規約で敷地全体
  を管理できることになる。
   ただし、土地又は附属施設が戸建て建物の所有者のみの共有
  属している場合は除かれるとされている。次の第二で述べる
ように、
  戸建て建物については、団地管理組合で管理できない
ので、戸建
  て建物の共有に属する土地(敷地)や附属施設につ
いても団地の
  管理から除外したのである。
   第二に、当該団地内の専有部分のある建物である(区分所有
  6812)
   これは区分所有建物であり、本来なら、各棟の区分所有者が
  れを管理すべきものであることは、言うまでもない。しかし、
団地に
  おいては、団地全体で統一的な管理をすることが必要で
あり、合
  理的である場合があるので、このような規約の制定を
定めたので
  ある。
   なお、戸建て建物は入っていないから、戸建て建物を団地の管
  理とすることはできない。

〇 マンションの管理の適正化の推進に関する法律は、マンション
 適正な管理をするために定められた。そして、マンションの定義とし
 て、
①「二以上の区分所有者が存する建物で人の居住の用に供す
 る専有部分」
のあるもの(区分建物)並びにその②敷地及び③附属
 施設をマンションと
している。
  さらに、団地の場合、団地建物所有者(区分建物と戸建て建物)
 の共有
に属する①土地又は②附属施設もマンションであるが、団
 地内の「戸建て
建物」はマンションではないとされている(同法2
 1号イ、ロ)
  これは、区分所有法上、団地内の戸建て建物については、団地
 の管理の
目的とすることができないとされているから(つまり、その
 管理はあくま
で、戸建て建物の所有者が行うから)、適正化法にお
 いても、マンション
の定義から外しているのである。

  
③ 特例の団地規約設定手続
    一般的な規約設定決議があった上で(2の④、4の①参照)、
   以下の要件が必要である。
    第一の土地又は附属施設にあっては当該土地の全部又は
   附
属施設の全部につきそれぞれ共有者の4分の3以上でその
   持
分の4分の3以上を有するものの同意が必要である。つまり、
   団地全体集会の決議で、4分の3以上の決議があったとしても、
   さらに、附属施設を共有する共有者・持分の4分の3以
上の賛
   成があったかどうかを調べる必要があるわけである。
    第二の場合、その全部(全ての棟)につきそれぞれ集会に
   ける区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による

   議があることを要する。1棟でも決議がなければ、団地管
理組
   合で棟を管理することはできない。
    なお、建物の一部共用部分に関する事項で区分所有者全員
   の利害に関係しないものについては、一部共用部分を共用す
   べき区分所有者の4分の1を超える者又はその議決権の4分
   の1を超える議決権を有する者が反対したときは、議決権は
   立しない
(区分所有法682)
    第二の場合、この全ての棟の決議と団地管理規約の制定決
   議があって、はじめて効力が生ずる。

〇 一団地内では、団地単位で管理するか、棟単位で管理するかは、
 どちらかを決定すべきであって、ある部分は棟単位で管理、ある
 分は団地単位で管理、と選択することは認められないと解され
てい
 る。例えば、第一の場合、附属施設の一部だけを管理すると
か、第
 二の場合、数棟の区分建物のうち1棟だけを管理するとか
はできな
 い。

〇 このような手続きで団地規約を定めると、それ以外に棟管理組
 合の規約は不要である。もちろん、棟管理組合は存続し、棟管理
 組合ごとに決すべき事項はある。例えば、義務違反者に対する措
 置や建物が滅失した場合の復旧などは棟単位の決議で決する。
 し
かし、これらに関する棟総会についても、団地管理組合で定めれ
 ば、
一々棟管理組合の規約で定める必要はない。
  標準管理規約の団地型においては、第8章に「棟総会」の項を
 けている。

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