2009年 7月の記事一覧

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09年07月27日 09時29分21秒
Posted by: 戦略研究.com
トヨタがGMとの合弁会社を清算する。ニコンがベルギーの精密測定メーカーを買収する。このような日本企業の動きは、蘇秦と張儀が活躍した中国の戦国時代を連想させる。グローバルな合従と連衡が、これからますます盛んになる。日本企業は伝統的に、事業の遂行をすべて自前でやってきた。社内で技術を開発し、その技術を応用した製品を市場に投入してきた。大手企業の戦略を見るとこの傾向が良く理解できる。しかし、技術がこれほど高度化すると、社内開発だけでは間に合わない。これからは、有望な技術を開発するベンチャー企業との提携も必要になってくる。

つまり、行き過ぎた多角化の反省として、水平統合を視野に入れた合従と連衡が盛んになっていると言える。かつて、コングロマリットがもてはやされた時代があった。数多くの企業を取り込み、企業数を増やすことでリスクを分散しながら、全体の売り上げを安定的に伸ばすという考え方である。しかし、そこそこの業績の企業を集めても全体の業績は安定しないし、個々の事業特性を知ることなしに、財務諸表を根拠に業績を管理しても、利益率の低い低収益の企業体になってしまう。やはりよく知った事業を経営するのが一番良い、つまり、本業回帰の現象が合従と連衡の背景となっている。グローバル市場の変化と多様性に素早く対応するには、水平方向への合従と連衡が、間違いなく必要になっていく。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)
09年07月21日 09時46分52秒
Posted by: 戦略研究.com
キリンとサントリーが経営統合を視野に入れた交渉を開始した。グローバル市場で戦うのに必要な規模の経済性を確保することが狙いである。基本的に国内市場に焦点を合わせている食品業界にもグローバル化の波が押し寄せたといえる。グローバル市場での競争相手はネスレでありユニリーバである。多民族が混在しているヨーロッパで、誕生し成長したネスレやユニリーバと違って、単一民族国家の日本で誕生し成長した企業には、未経験の多くの試練が待っている。

多くの企業がグローバル市場へと打って出る。これは、間違いのない必要不可欠な戦略であるが、グローバル化の時代であるからこそ、国内市場を強固なものにする努力が今まで以上に望まれる。国内に競争力を支える重要な柱がないと、長期的にグローバル市場で競争優位を維持することは難しい。それゆえ、グローバル市場への正しいアプローチは、競争優位を選択的に利用することである。つまり、各国の市場特性に合わせて、競争優位のある商品を投入するのが最善の戦略である。こう考えると、容易にまねのできない製造技術で生産されるキリンの「午後の紅茶」が、中国やタイで人気があるのが理解できる。国内市場でも、競争優位を持たない企業が、地元を固めずに大都市だけに焦点を合わせて成功することは、至難の業である。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)
09年07月13日 09時38分54秒
Posted by: 戦略研究.com
日本の携帯電話メーカーが、海外市場に再進出する。高性能な機種を、次から次へと投入する日本の携帯電話メーカー。それを後押しするソフトの開発。高性能で高額な商品を投入し、その商品から得られた利益で、さらに高性能で高額な商品を開発する。日本企業のハイテクは素晴らしいことに異論はない。それでも、日本の携帯電話メーカーの世界市場でのシェアは、全社合わせても10%以下でしかないのが実情である。

商品の開発には、イノベーションのジレンマが存在することを知る必要がある。つまり、高性能化の上昇線と同じ上昇角で、消費者は高性能な商品を受け入れない。消費者は、高性能化の上昇線よりも少し遅れたタイミングで、しかもより緩慢な角度の上昇線で高性能商品を受け入れる。だから高性能化のタイミングとその程度が難しい。かつて、その両方を理解せずに、日本で売れている高性能機を世界市場にそのまま投入した日本の携帯電話メーカーは、世界市場から撤退を余儀なくされた。ビジネスは、常に地動説で理解することが必要である。素晴らしい頭脳を有する開発者を中心に、世界は回っているという天動説は捨てるべきである。天動説を捨てると、マイクロソフトがなぜ高性能なビスタに代わるOSを、急いで投入しようとしているかが理解できる。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)
09年07月06日 09時30分25秒
Posted by: 戦略研究.com
日本航空は、国際航空貨物事業の抜本的なてこ入れに乗り出す。全路線で料金の30%引き上げを要請し、北米の貨物専用線を減便する。政府の監視下で経営再建を目指している日本航空の2008年の連結売り上げは約2兆円で、そのうち国際貨物事業の売り上げは約10%である、しかし、508億円の営業赤字の約40%は国際航空貨物事業によるものである。そのため、国際物流分野の立て直しが急務となっている。

かつてアメリカン航空は、大手防衛機器メーカであるレイセオンと組んで新しいサービスを展開した。それは、アメリカン航空が、レイセオンのその日の受注を集計し、自社の夜間航空輸送で、全国の卸売業者まで輸送をすることであった。つまり、全国から入る受注内容は、レイセオンの工場のコンピュータに入り、自動的に出荷伝票が作成され、配送部へ回ると同時に、在庫管理部と生産計画部にもデータが送られる。この場合、アメリカン航空の製品は何か。航空貨物輸送は、ほんの小さな要素にすぎない。アメリカン航空の製品は、完璧に統合され自動化された、データと部品の配送システムなのである。航空機エンジン部門で巨大な利益を生み出すGEは、自社のエンジンを搭載する航空機を24時間オンラインで監視している。技術革新が進むにつれて、自社の製品を再定義することも必要になる。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)
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