2009年 8月の記事一覧

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09年08月31日 09時16分45秒
Posted by: 戦略研究.com
今年の夏は、冷夏に終わりそうである。暑い夏を期待して、主力ブランドの派生商品として、凝った名前のビールを次から次へと投入し、もっともっとビールを飲んでもらおうとしたビールメーカーの思惑通りに行かなかったようである。幅広い商品バラエティを供給して、「何か目新しいもの」を求める消費者の欲望を満たそうとする。そして、広告の大量出稿で凝ったブランド名を、消費者の脳にインプットする。しかし、結局は、ひと夏の思い出になってしまい、夏が過ぎると消費者の脳に残ったブランドは、「スーパードライ」であり「一番しぼり」という結果になってしまう。

製品ラインを拡張すると、単一ブランドで様々な消費者のニーズを満たすことができるようになる。しかし、この戦略を強力に推進すると、顧客はさらにバラエティを求めるようになり、間接的にブランド・スイッチを促すことになる。短期的には、派生商品によってブランド全体のシェアは増加するかもしれない。しかし、カニバリゼーション等によって、長期的には、主力ブランドのブランドロイヤルティを低下させる可能性が少なくない。派生商品を増やすことは、馴染み客からすると、ブランドイメージを拡散させるように感じられるものである。あまり派生商品を増やすと、「難しい宣伝文句はいいから、とにかく、もともとのスーパードライを飲ましてくれ!」という顧客が増えることになる。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)
09年08月24日 10時28分07秒
Posted by: 戦略研究.com
花王がロシアに進出する。花王だけでなく、大手日用品メーカーは、途上国向の低所得層に照準を合わせて、低・中価格帯の商品・サービスの品揃えを強化している。どのような企業であっても、少子高齢化がすすむ国内市場にだけ焦点を合わせるわけにはいかない。しかし、政治の世界では話はまったく違っている。内需拡大が声高に叫ばれ、お金は天から降ってくるという錯覚を覚えるような大盤振る舞い。さらに、高速道路の料金を無料にするというおまけつき。完全に、サプライサイドの視点が欠如している。

国も企業も競争優位を強化しないと、日本の先進国の地位も危うくなる。先進国が得意としてきた自動車や家電製品等の工業製品も、発展途上国の追い上げが激しく、すでにエンジニアード・コモデティと称されるようになっている。液晶はシャープというイメージは、韓国のメーカーによって破壊されてしまった。国内の携帯電話メーカーの動きに注目していると、いつの間にか、ブラックベリーというカナダの携帯電話が世界市場の注目商品として躍り出た。国の競争優位の源泉は何か?それは、国民が共有する価値観と考えると分かりやすい。利便性を追求したマクドナルドのようなビジネスが米国を代表するなら、「もったいない」というメンタリティで、資源の有効利用を追い求める日本の技術に大きな未来がある。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)
09年08月17日 10時29分44秒
Posted by: 戦略研究.com
広告業界の業績が低迷している。大手3社とも、第一四半期の売上げは前年比で10%以上減少した。9時に始まるべき番組が8時57分に始まる現状を見ると、広告業界の窮状が理解できる。景気が悪化すると、広告費と交際費が、真っ先に減少する。広告は本質的に見込ビジネスである。時間あるいは場所を販売し、そこに広告を出稿してもらって、売り上げが上がる仕組みである。出稿が減少すると、空き媒体が増え売り上げが減少する。見込ビジネスは商品が生命線である。広告を出稿してもらえそうな時間と場所を、いかに提供できるかが決め手になる。

対照的に、コンサルティング業界も翻訳業界も、本質的に受注ビジネスである。受けた注文をいかに正確に、忠実に、誠実に履行するかが決め手になる。また、受注先の企業数が、見込ビジネスほど多くないのも特徴である。利幅は小さいが、景気の変動に大きく影響されないビジネスである。こう考えると、見込ビジネスと受注ビジネスを上手くミックスして商品を提供できる企業が、不況に強いということなる。広告会社が、長期の大規模プロジェクトを受注し、デパートが長期の展示会等の催し物を提供するのは、同じ論理である。この場合の商品は、発想力、企画力、デザイン力ということになる。どのような業界にあっても、ビジネスをこの二つの側面から考えて、そのための成功要因を普段から強化することが必要である。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)
09年08月10日 09時50分48秒
Posted by: 戦略研究.com
日本航空の業績悪化に歯止めがかからない。第一四半期の赤字が990億円で、四半期としては過去最大の赤字を記録した。不採算路線からの撤退を含めたリストラが進行中である。ナショナル・フラグ・キャリアとして殿様商売に浸りきった結果ともいえるが、背景も経過も、強いアメリカの象徴であったGMとよく似ている。どんな巨大な企業でも、自社の商品が売れないと倒産する。自明の理である。自社の商品を絶え間なく革新するとともに、自社の商品を買ってくださる顧客のロイヤルティをいかに維持するかで勝負は決まる。

カスタマーロイヤルティを維持するには、「真の顧客」を定義する必要がある。これは簡単なようで難しい。顧客を細分化して、あらゆるデータを分析して企業が独自に定義するしかない。自社の商品を購入した顧客に、過去どのような商品を購入したかを話してもらうだけでも、かなりの分析ができる。すべての人々が「真の顧客」と定義できる企業は存在しない。カスタマーロイヤルティについては、米国市場で成功しているホンダが良い見本を提供している。顧客のライフサイクルに合わせたマーケティングが功を奏し、ホンダ車のオーナーのリピート・オーダー率は、業界平均の40%を大きく上回る65%である。これだけ高いと、ディーラーや流通業者もメリットを享受でき相乗効果が期待できる。当社の商品・サービスがいやなら、他社に行ってくれという殿様商売に未来はない。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)
09年08月03日 00時39分31秒
Posted by: 戦略研究.com
選挙戦が激しくなると、未来予測の数字がクローズアップされる。未来予測ほど、人々の関心を集めるものはない。多くの知識人が未来を予測し、それをマスメディアが報道し、人々は大変動が到来するかのように思ってしまう。特に、ビジネスでは、その予測によって、悲観的になったり、楽観的になったりする。かつて、ペーパーレス社会の到来が予測された。しかし、未だにオフィスでは書類が山積されている。ガソリンがリッター当たり200円の時代が来ると、予測した知識人もいた。しかし、予測は当たらなかった。世界中の賢人が集まるローマクラブが出版した「成長の限界」の予測も、的中率はせいぜい50%程度である。

未来予測では、「未来は現在の延長線上にはない」という事実を考えておく必要がある。自然界の事象は、ある程度正確な予測が可能である。植えた苗は、時間が経過すると必ず穂をたれる。しかし、人間社会では、現在のなかに未来があることは少ない。一時の熱狂的なトレンドも、過去の遺物となる可能性を秘めている。やかんに入っている熱湯も、熱を持続的に加えなければ、もとの水に戻ってしまう。さらに、事象が一定方向にのみ動くことはありえない。バブルの絶頂期に贅沢三昧をした人が、バブルがはじけると、「格差のない社会を!」と声高に叫ぶ。そして、景気が回復すると、真っ先に格差のない社会に背を向けて、次のバブルを期待する。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)
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