キリンとサントリーが経営統合を視野に入れた交渉を開始した。グローバル市場で戦うのに必要な規模の経済性を確保することが狙いである。基本的に国内市場に焦点を合わせている食品業界にもグローバル化の波が押し寄せたといえる。グローバル市場での競争相手はネスレでありユニリーバである。多民族が混在しているヨーロッパで、誕生し成長したネスレやユニリーバと違って、単一民族国家の日本で誕生し成長した企業には、未経験の多くの試練が待っている。

多くの企業がグローバル市場へと打って出る。これは、間違いのない必要不可欠な戦略であるが、グローバル化の時代であるからこそ、国内市場を強固なものにする努力が今まで以上に望まれる。国内に競争力を支える重要な柱がないと、長期的にグローバル市場で競争優位を維持することは難しい。それゆえ、グローバル市場への正しいアプローチは、競争優位を選択的に利用することである。つまり、各国の市場特性に合わせて、競争優位のある商品を投入するのが最善の戦略である。こう考えると、容易にまねのできない製造技術で生産されるキリンの「午後の紅茶」が、中国やタイで人気があるのが理解できる。国内市場でも、競争優位を持たない企業が、地元を固めずに大都市だけに焦点を合わせて成功することは、至難の業である。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)