管理会社には、必ず、管理組合を担当する社員
 (従業員)がいる。それ自体は当然のことであり、何
 ら問題ではない。

  担当者1人で10件前後の管理組合を担当してい
 るようである。管理組合に対して、管理契約の当事
 者の社員として、その契約内容の実現のため、日々
 忙しく働いておられる。

  管理会社と管理組合は、マンションの管理につい
 て契約をしている訳であるから、その契約内容の誠
 実な実現が双方の契約当事者に求められている。

  管理契約は、民法の委任契約であり、当事者の
 信頼関係に基づくものである。したがって、当事者
 は、その信頼関係が破れたと思えば、例え、契約
 の期間前でも、契約を解除(解約)できる(民法651
 条1項)。それを受けて、国土交通省の標準管理委
 託契約書は、3ヶ月の期間をおいて、任意に解約で
 きる旨の規定を置いているのである(標準管理委託
 契約書19条参照)。

  委任が当事者の信頼関係を基礎にしているから
 こそ、このような規定を置いているのである。

  管理委託契約書に、他は標準管理委託契約書を
 参考にしながら、この任意に契約を解約できるとす
 る規定を削除しているものがある。これなどは、管
 理会社主導で管理委託契約書が作成されたもの
 に他ならない。

  しかし、それでは信頼できる管理会社といえるだ
 ろうか。自分たちの管理に自信があれば、このよう
 な信頼関係に直結するような規定を意図的に削除
 しないであろう。

  管理会社の社員が、頻繁に管理組合の理事会に
 出席したり、総会に出席しているが、それが、契約
 上の債務を正しく履行するためのものであれば、結
 構なことである。正に信頼関係維持のためであるか
 ら。

  ところが、管理の不都合を事前にキャッチしてこれ
 を封じ込めるために、情報の取得をしているふしが
 ある。不都合を事前にキャッチすること自体は当然
 に許される。そして、それを改善するのであれば。
 しかし、管理組合の理事と結託して、それを封じ込
 めるためであれば、信頼関係に背くことである。
 
  そもそも、管理組合と管理会社は利害が対立する
 契約関係にある。運命共同体ではない。その当事
 者の一方が管理組合の理事会にしょっちゅう出席し
 ているというのは、おかしい。そういう状況で理事会
 側として、自由に発言できるのか。

  もちろん、理事会側が、管理の状況等の説明の
 ために、契約の当事者(管理会社の担当社員)を呼
 んでその説明を求めることはどんどんやるべきだ。
 しかし、常に理事会に管理会社の担当社員が出席
 するというのは、理事会が一人立ちしていない証拠
 である。管理会社に完全に支配されて、契約の当
 事者としての資格を失っているということだ。

 ※エースマンション管理士ホームページhttp://acemansyonkanri.law.officelive.com/