雇用状況の改善が進まない。サプライサイド軽視の政策を推進した結果、企業の競争力は低下し、大学新卒者の内定率の低下という憂慮すべき事態が起きている。これでは、若者の将来にも大きく影響し、日本の国力低下が懸念される。従来型のビジネスでは、雇用拡大は難しく、各企業はイノベーションの創出に尽力している。その結果、ビジネスが複雑系へと、はてしなく進化し続けている。このような時代には、セレンディピティ、つまり、偶発的発見をする能力が重要になる。

イノベーション創出の過程では、複数の物事を組み替え、つながりを持たせることが必要になるが、つながりが分かりにくいほど、組み直しのために大きな知的ギャップを埋める必要があり、予期せぬことが果たす役割は大きくなる。セレンディピティとは、この予期せぬことを発見する能力である。生物の進化は、セレンディピティを大いに利用している。進化とは創造的であることで、創造性の原動力は、ランダム性や冗長性である。冗長性を極限までなくすことは、生き残りに有利な条件とはいえない。冗長性がなくなれば、現在の環境にのみ最適化して、計画が少しでも狂うと身動きがとれなくなってしまう。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)