選挙戦が激しくなると、未来予測の数字がクローズアップされる。未来予測ほど、人々の関心を集めるものはない。多くの知識人が未来を予測し、それをマスメディアが報道し、人々は大変動が到来するかのように思ってしまう。特に、ビジネスでは、その予測によって、悲観的になったり、楽観的になったりする。かつて、ペーパーレス社会の到来が予測された。しかし、未だにオフィスでは書類が山積されている。ガソリンがリッター当たり200円の時代が来ると、予測した知識人もいた。しかし、予測は当たらなかった。世界中の賢人が集まるローマクラブが出版した「成長の限界」の予測も、的中率はせいぜい50%程度である。

未来予測では、「未来は現在の延長線上にはない」という事実を考えておく必要がある。自然界の事象は、ある程度正確な予測が可能である。植えた苗は、時間が経過すると必ず穂をたれる。しかし、人間社会では、現在のなかに未来があることは少ない。一時の熱狂的なトレンドも、過去の遺物となる可能性を秘めている。やかんに入っている熱湯も、熱を持続的に加えなければ、もとの水に戻ってしまう。さらに、事象が一定方向にのみ動くことはありえない。バブルの絶頂期に贅沢三昧をした人が、バブルがはじけると、「格差のない社会を!」と声高に叫ぶ。そして、景気が回復すると、真っ先に格差のない社会に背を向けて、次のバブルを期待する。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)