三越百貨店が正社員を2割削減する。厳しさが増す百貨店市場は今後も縮小に向かうと見られ、人件費を大幅に抑える決断をした。三越というとすぐに、東京の日本橋にある由緒ある本店をイメージしてしまうが、現実には販売力が弱い中・小型店も多い。経営資源を低価格品に集中的に投入しているユニクロが急成長し、スーパー業界が低価格品の開発に経営資源を投入している現状を考えると、高価格品を販売する百貨店業界で、しかも販売力の弱い店舗が生き残ることは難しい。そごうの大阪店も閉店になった。

売り上げが低迷している店舗に、てこ入れして、何とか売り上げを伸ばそうとする戦略よりも、売れない店舗を切り捨て、売れる立地条件を求めて新店舗を建設するのが理にかなった戦略である。政府による補助金を期待している人々が多いという現状を考えると、国内の景気回復には、まだまだ時間がかかりそうである。小売業界では、店舗のスクラップ・アンド・ビルドが、ますます重要な戦略になる。市場を日本と捉えると先行きは暗いが、市場は世界と考えると、発展の余地は大きい。事業環境は激変している。重要なのは、どれだけ速く発想の転換ができるかである。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)