愛知県豊田市周辺で最大級の家具小売チェーンが、名古屋地裁に民事再生手続きの開始を申し立てた。この企業は、豊田市周辺に焦点を当て、ドミナント戦略を積極的に推し進めた。嫁入り道具として収納家具を持参する傾向がうすれたことと、クローゼットなど備え付けの収納が充実した住宅が増えたことなどが原因で、売り上げが伸び悩んだ。しかし、売り上げが低迷するなか、この企業は店舗数をさらに増加し、地域の需要を根こそぎ取り込むことで生き残りを図った。

セブンイレブンが、開業してからしばらくの間、東京都江東区に焦点を合わせたドミナント戦略を推進し、現在の規模の基礎を築いたことは有名である。しかし、売り上げが伸びるにしたがって、適正規模を保って出店している。あまり知られていない事実であるが、セブンイレブンといえども、全国の都道府県に店舗が存在するわけではない。行き過ぎたドミナント戦略は、大きな問題をもたらす。つまり、同一地域内での販売店の数が多すぎると商圏が重なり、販売店同士が顧客を取り合う状況になっている。

マーケティングを考える場合、同一市場内に小さな問屋を数多く起用して、市場をくまなくカバーするよりも、有力な問屋を起用して、その問屋内でのシェアを拡大し、その結果として、市場でのプレゼンスを強化するべきである。普通、市場占有率は60%が限界と考えるべきである。それ以上、市場占有率を増やそうとすると、この破綻に追い込まれた企業のように、弊害が顕在化してビジネスに大きな打撃を与えることを銘記する必要がある。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)