2009年 9月の記事一覧

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09年09月28日 09時22分30秒
Posted by: 戦略研究.com
トヨタはグループの証券事業を、独立系の中堅証券会社に譲渡する。経営資源を自動車事業に集中し、収益力を強化する。国内市場では、価格破壊が潮流になり、すべての業界で安値攻勢が続いている。安値競争は、さらなる安値を求める顧客を刺激する。その結果、競争力を持たない企業は淘汰されていく。トヨタといえども、例外ではなく、経営資源を集中して、価格競争の時代を勝ち抜く高収益体制を構築する必要に迫られている。

価格競争が激化すると、まず人件費にしわ寄せが来る。そして、消費者の可処分所得の減少につながり、それが、さらに低価格品を求める行動に拍車をかける。全くのスパイラル状態に陥ってしまう。少子化で国内市場の縮小が避けられないことは、すべての経済人が何年も前から指摘していたことである。消費者の減少が持つ意味は大きい。桁違いの金持ちでも、毎日2人前の食事を食べることはできない。それでも、多くの企業は総花的な事業構造を見直すことなく、国内市場から目を転じることもなかった。低価格品に経営資源を集中し、日本市場で磨き上げられた技術とノウハウで完全武装して、海外に目を向けているユニクロの戦略に見習うべき点は多い。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)
09年09月24日 09時38分06秒
Posted by: 戦略研究.com
集客型エンターテイメントのチケット市場規模が2008年は、前年比1.2%増の1兆1600億円で2000年以降では、最高の市場規模を記録し、2009年は横ばいになると予測される。現状の消費不況下でもエンタメ市場は、単価の低いジャンルを中心に健闘している。落語や漫才を始めとして、エンタメ業界での活躍を夢見る若者が増加し、劇場に押し寄せる若年層が増加している。少子化の恩恵で、お小遣いが増えた子供たちの市場への貢献度は大きい。子供の養育費の負担が減少し、その分ゆっくりと観劇を楽しみたいと考える夫婦も増加し、高齢化がシニア世代の観劇を支えている事実も見逃せない。

目に見える商品の代表は、高級ブランド商品といえるが、ブランド志向の高い日本市場でも、高級ブランド品の売り上げの低下が激しく、高級品を販売するデパート業界の売上不振も理解できる。米国では、高級ワインの値引き合戦が市場の潮流になっている。技術やサービスが目に見えない商品の代表ともいえるが、もっと柔軟に考える必要がある。映画スターの演技力も目に見えない商品である。こう考えると、アクションスターとデビューしたが、誰もがうらやむジェームズ・ボンド役に終止符を打ち、様々の役に挑戦して演技力を磨いたショーン・コネリーの生き方の素晴らしさが理解できる。物質面での生活水準が高度になると、知性にフォーカスした文化が台頭し、目に見えない商品のマーケティングが重要になってくる。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)
09年09月14日 09時19分18秒
Posted by: 戦略研究.com
銀行・証券を融合した事業を目指す三井住友と、独立した証券会社の立場を守りたい大和の経営戦略の違いから、10年前に両社が法人向けに設立した合弁会社である大和證券SMBCが大和の100%子会社になる。今春、三井住友がシティグループから、日興コーディアル証券の買収を決めて、個人向け市場に本格的に乗り込む戦略を選択した時に予想された結果である。提携相手が強力な競争相手となって、直接競争が避けられない状態になると、合弁会社を設立した趣旨が全然違ってくる。

合弁事業は、うまく機能すれば1社単独では達成できない大きな成果が期待できる。しかし、ビジネス環境の変化によって、合弁事業がなんの変化もなしに、いつまでも持続することはありえない。事業領域が重複したら、躊躇せずに合弁を見直す必要がある。せっかく設立した合弁会社だからとウェットに考えるべきではない。合弁企業の平均寿命は米国では7年、日本では17年と言われている。合弁事業は、短期間にある目標を達成するために他社と手を組むといった経過措置であるから、形態の変更や解消は必ずしも失敗を意味しないというドライな考え方が必要である。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)
09年09月07日 09時49分03秒
Posted by: 戦略研究.com
三越百貨店が正社員を2割削減する。厳しさが増す百貨店市場は今後も縮小に向かうと見られ、人件費を大幅に抑える決断をした。三越というとすぐに、東京の日本橋にある由緒ある本店をイメージしてしまうが、現実には販売力が弱い中・小型店も多い。経営資源を低価格品に集中的に投入しているユニクロが急成長し、スーパー業界が低価格品の開発に経営資源を投入している現状を考えると、高価格品を販売する百貨店業界で、しかも販売力の弱い店舗が生き残ることは難しい。そごうの大阪店も閉店になった。

売り上げが低迷している店舗に、てこ入れして、何とか売り上げを伸ばそうとする戦略よりも、売れない店舗を切り捨て、売れる立地条件を求めて新店舗を建設するのが理にかなった戦略である。政府による補助金を期待している人々が多いという現状を考えると、国内の景気回復には、まだまだ時間がかかりそうである。小売業界では、店舗のスクラップ・アンド・ビルドが、ますます重要な戦略になる。市場を日本と捉えると先行きは暗いが、市場は世界と考えると、発展の余地は大きい。事業環境は激変している。重要なのは、どれだけ速く発想の転換ができるかである。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)
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