利益が伸びない!

この花屋さん、東京の郊外にあり、殆どがパートさんでしたが、従業員は何と80名、この地域に、4店舗展開している。この業態では“大手”に入る。

社長の北村さんは女性 51歳。お母さんの始めた花屋さんを継いで、18年でここまで拡大した。キメ細かいサービスで、お客さんの心をつかんでいった。

女性は花をもらうと素直に喜ぶ。その心情を理解して、商売に次々反映させていった。

お誕生日や、結婚記念日、結婚式や法事のときの花の品揃え、値段の割りに見栄えのする花の選び方を、次々に工夫していった。

しかし、最近北村社長は悩んでいた。4店舗あるお店の利益が伸びないのだ。売上は順調だがロスが多く、結局、儲けが少ない。

「何故だろう?」 各店長とも会話してみたが、たくさんの「儲からない理由」を並べたてられ、逆に整理できない。

当り前の仕事が出来ていない

こうした中、知り合いの経営者(従業員40名・小売業)から、国際規格のISOをとった話を耳にし、様子を聞きに行った。

知り合いの元村社長は言った。

元村社長「いや、うちあたりで出来るか心配だったんだが、何とか1年かけて、認証とれたよ。書類づくりが大変だったけどね。」

北村社長「で、何か具体的なメリットはありますの?」  と素直に質問した。

元村社長「いや、まだそこまでは行っていないけど、ともかく、我社の仕事の整理が出来たのと、どこが問題かがすぐわかるのが、今の“メリット“かな… 」

北村社長「でも、お金がたくさんかかるのに、効果が出なかったらどうしよう、と思いませんでした?」

元村社長「勿論考えたけど、ISOはね、理解するとわかるけど、当り前の事ばかりなんだよ。当り前の事が、うちあたりの企業では出来ていないんだよ。

北村社長「うーん。わかったような、わかんないような話ね。」 と、やや不思議がっ

た。しかし、その言葉とは別に、その社長の表情がやけに明るい事が印象的だった。

どうも、400万円くらいはかかるみたいだ。うちの年間の経常利益の約半分近い。結構な投資だ。

形式的にただ「カンバン」として取り組むほど、うちは余裕はないし、もう少し考えなくては……と思った。

2ヶ月がたったある日

北村社長は、お客さんから大クレームをもらった。電話口で、カンカンになったお客が

「社長を出せ!」 とわめいたからだ。平謝りに謝って、「すぐ代品をお届けします。お

代は結構ですから。」 と。

電話の後、さっそく店長に「こんな初歩的なことで、何でミスばかり起こすの?当り前

の事が出来ないんじゃ、アルバイトだって、だめよ、ちゃんと教育しなきゃ。」

と、こう言って、ふと、「当り前の事ができないんだ。」という元村社長の言葉がよみが

えった。

そうだ、この辺だ

と気づき、すぐさま元村社長に電話して、ISOを指導したコンサルタントを紹介してもら

い、会う約束をした。

今なら、ISO取得費が「助成金の活用」で実質10万円で可能になります。

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1週間後、指導の契約をし、翌月、キックオフ。ISOの取得作業がスタート。5人のプロ

ジェクトチーム。全店長と息子の専務さんの構成。

そして、約10ヵ月後、見事ISO-9001の本審査をパスした。

そして、半年が経過し、月々の売上、利益をチェックしてゆくと、月にして30~40万円

の利益が向上していることがわかった。

何故だろう。ISOってそんなに効果があるのかしら。息子さんを呼んで、じっくりISOの

中味と、何をポイントにシステムづくりをしたのか、説明してもらった。

確かに北村社長は、ISO導入に当って、1つだけ息子さんの専務に言った。

「うちの従業員は、80%がアルバイト。でもお客さんにはそんな事は関係ない。誰が

やっても、同じ質のサービス・販売が出来るようになれば、ISOをやった意味がある。

この点だけは心してやってちょうだい。」 と言ったのであった。

期待以上の成果。ISOのせいかどうかよくわからなかったが、ようやく理解ができた。

ISOを取る為に、最も力を入れた事。それは…

お花の販売をちゃんとしたシステムにした事だ。

メニューがなかった

例えば

・ メニューをつくる

お花は店先で、ご注文によって花を見繕い、お客さんに渡し、お金をもらう。しかし、例えば2,000円の花の場合…

  カーネーションなら  何本

  菊の花なら      何本    と決まっていないのだ!

  バラの花なら     何本

その時の花の大きさ、仕入れが多い時、少ない時で、又接客する従業員によって、バラバラなのだ。

お客さんが、以前、バラを2,000円買ったとき、「10本あった。」 と憶えている場合は少ない。しかし、これはよく考えてみるとオカシイ。バラの大きさが中くらいのとき、

10本で2,000円と決めておくべきなのだ。

そこで、この会社は、15通りのパターンに分けて、写真をつくった。

定価をつけて。→ 全店の共通メニュー(マニュアル)とした。

又、お客さんから電話で注文が来ることも多い。

その時、店員はメモをとった。しかし、よく聞き違いが発生する。もっとも、お客さんも言い違うこともある。更にやっかいなのが、記憶違い。言った事をお客自身が忘れてしまうのだ。

これを解消する為にこの店では…

受注メモという様式をつくった。簡単なものだが、大変威力を発揮した。

レストランのウェイトレスのように。必ず、注文内容を復唱した。

FAX のあるお宅には、そのメモを確認メモとして、返信した。そうでないお客には、

「ご注文を確認いたします。」

 “バラ(赤) 15本と、カーネーション(白) 10本”で、代金は 3,200円 明後日

午後1時お届けですね?

「申し訳ございませんが、今申し上げた事を控えていただけますか?有難うございます。」 というやり方をルール化した。

又、花はすぐ枯れる。いつお届けするかによって、又、その花をいつ使うのか、タイミングを聞いておくことも徹底した。

「ご主人の誕生日が4日後ですね。お届けは前日夕方に。はい、わかりました。」

そして、在庫のある場合は、少し花がつぼみの物を多くした。

そんな様々な細かなマニュアルを、わかりやすく、アルバイトが今日入ってきてもわかるように、写真と解説、注意点を書き加えた。

こうした売り場のマニュアルを20種類ほどつくり、店長にその指導要領を教育した。

効果は絶大だった。

クレーム 80%減

何しろ、1ヶ月で月に20~30件はあったミス、つまり、商品が注文したものと違うというクレームが80%も減った。

大変なコストダウンだった。花が無駄にならず、かつ、二重手間の配達が減り…という状況だ。

又、以前は、「花の本数が違う。この店はいい加減だ。」 というシビアーなお客は、黙って、他の店へ行ってしまったが、これがなくなった。つまり、固定客が増えていった。

約10ヶ月で、ISOの取得に要した投資、約500万円を取り戻した。

更に、売り上げが伸び出した。利益率が上がり、売上との相乗効果で、2,000万円以上の経常利益となった。

定着率も改善

又、面白い事は、アルバイトの定着率も改善されたのだ。

仕事を先輩の見よう見まねでやるよりも、ルールや方法が、はっきり目に見える方が、若い人はモラルが上がるという単純な理由だった。 毎月、20~30万円かけていた求人募集費用も、2ヶ月に1度で済むようになってきた。

北村社長は、最近つくづくと思う。「当り前の仕事と思っている事が、当り前に行われる事こそ貴重なのだ。」 と。

この事例は、たまたまISO-9000の取得をきっかけに実現した改善である。何も

ISOを取らなくても出来そうな内容である。

しかし、ISOは、仕事の標準化だけを念頭においているのではない。、この度の規格(9001・2008年版)は、特に

1. 顧客満足の実現

2. 継続的改善    が2本柱になっている。

この考え方が、50ページに及ぶ品質マニュアルのいたる所に顔を出す。

ISOとは、その会社の仕事の商品や、サービスを保証する規格ではない。

何を保証するのか?

その会社の仕事の質=経営の質を保証するものなのだ。

だから、社長からアルバイトに至るまで、どんな考え方と、どんな仕組(ルール)で仕事をするのかを定めた「会社の憲法」なのだ。

「仕事の仕方」… これは、サービス業、ソフトウェア業、販売業という業種では、殆ど人任せ、当事者任せである事が圧倒的に多い。

均一なサービス、販売、接客はなかなか行われない。

商品を海外に輸出している製造業が、最も早くISOに取り組んだ。

しかし、今では、“引越しのS社”がTVで宣伝しているように、サービス業の方が、効果が挙がるとわかってきた。

人手に頼る商売こそ、ISOは威力を発揮する。

人が直接、接する業種こそ、ISOの意味がある。

という事が実証されつつあるのだ。

マクドナルドの店頭のアルバイトに

「ハンバーガーが1個ですか?… お飲み物はいかがしましょう?」 と聞かれる。

すると、つい 「ホットコーヒー 1つ」 と言ってしまう。

「お飲み物は… 」は、マニュアルで言う事が義務付けられている。

言うと、言わないでは、売上げが恐らく、何十億も違うと思われる。

小売業、サービス業の方々、是非これを念頭に、今の自社の仕事を見直してみましょう。

ISOは何故、これほど普及したのか?  それは、

こうして決めた「ルール」が実行されているか否かを、定期的に、お金を払って、第三者に監視に来てもらう事になっているからなのである。

                                         ISO原人

 

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