これは、ISO9001の最大の目的である「顧客満足」について、実際ISO取得企業で実践した状況だ。


このホームページで「劇的成果」を挙げた運送業P社の話。

P社はピアノやコピー機の重量物をを二人以上の人員で運んでいる。

一方は一般家庭中心、一方はオフイス中心だ。


ISOを初めて以来、年1回は一般客にアンケート調査を実施している。

昨年は集計した結果98%の回答者が「とても満足および、まあ満足」と

回答していた。


しかし、一部の顧客は、「わがままな」回答をしていた。


これは、夏場にピアノを家庭に搬入する作業のときに起きる「不満」だった。


つまり、夏場30度を越える日に250キロを越えるものを運ぶと、作業者は汗ダラダラになる。生理現象だから仕方がない。


しかし、最近の顧客は、「要求レベルが高い、そしてうるさい」

アンケートに「汗臭い」と苦情を言う。さらに、「靴下が汚れている」と文句を言う

客も少なくない。


重量物であるピアノの搬入は、簡単には終わらない。荷降ろしして、5分や10分は

かかる。そして、据付後「取り扱い方やお手入れの説明」も義務付けけられている。


毎日、1日に3~4軒の納品を行う。

真夏は二軒目の作業前に、作業Tシャツは、汗だらけだ。そして、靴下も汚れてくる。

人によっては、「臭う」


作業の結果なのだから、と言いつつも顧客が「不快」と思っている事も事実だ。


昔の人は、こういう状況を「よく働くわね、ご苦労様」とねぎらい、冷たい麦茶をくれた。

しかし、今の主婦の中には、違う反応をする人も多いのだ。


最近の学校に「理不尽な苦情を言う親」とやや通じる自分本位の人。


この問題について、P社では、各営業所のリーダーがあつまり、改善検討会議が開かれた。2時間弱の検討の結果、以下のような改善案がまとまった。


1. 作業Tシャツはその日の納品件数分用意してゆく

2. 靴下も同様に準備

3. タオルを複数もってゆき、コンビ二などで小まめに汗を拭く。

4. 習慣化するまで、出来ているかどうかを相互にチエックする。

5. 顧客の反応を注意してみる。


と言う「改善案」がまとまった。

一般の人が見ると、「なんだ、そんな事か」と思うかも知れない内容だ。


しかし、この運送会社では、「画期的」な事なのだ。


つまり、いままで、ピアノの搬入は、販売店からの指示で動いていた為、顧客とは

この運送会社にとっては、「販売店」だけなのだった。だから、顧客からクレームがあると販売店から聞かされていた。


従って、よっぽどの苦情でないと来なかった。ISOを始めるまで、それが「顧客満足」

のモノサシだった。


ピアノを運ぶ一軒一軒の家庭に「聞く」ことは無かった。


こういう態度は、サービスを提供する側の論理だった。


改善の効果は抜群だった。満足度は更に向上した。そして、従業員の快適度も向上し、会社への信頼度が向上した。


今P社は、3つの長期作業改善目標を掲げている。

1. 作業技術の向上

2. 顧客とのコミュニケーションの向上

3. マナーの改善だ。


特に力を入れているのが、2.3.だ。


運送会社に就職する人は、通常人と話が苦手である。だから、営業ではなく運送

作業の仕事を選んだ。たとえ、1~2分の説明でも本人には、とても難しい

ことなのだ。


しかし、ISOを契機にドライバーたちは、1.2.3が出来て初めて仕事が完結したと

思うようになっている。


そして、P社は今年に入って、ピアノの足に履かせる「耐震マット」(定価6,000円)の

売り上げが前年を大きく上回る実績を挙げている。


殆どドライバーがピアノの納品の直後に、説明してその場で販売しているものだ。


これは、マナー教育、コミュニケーション教育の賜物である。

「顧客満足」・・P社では、ISOの取り組み前には無かった「概念」だ。


                                           ISO原人