寝具業界の老舗が民事再生法の適用を申請した。有名なデザイナーブランドを冠した高級寝具を市場に投入し、寝具市場にファッション性を持ち込み急成長した企業である。破綻までの経緯を読むと、消費者の動向と流通の変化を読めなかったとともに、ブランドビジネスによくある高コスト体質が大きな問題点であることがわかる。高コスト体質を改善することなく規模の経済性を追求し、急成長を求めると、やがて大きな問題点に遭遇する。

景気がなかなか回復しない。消費者の低価格志向に応えるため、規模の経済性で少しでもコストを下げようと、設備投資に無理をする。そのため、借入金が増え金利の支払いに苦労をする。当然、自己資本率は低下する。非上場の中小企業は、市場から資金を調達できないので、経営者が自ら増資するか、税引き後利益を貯めるしか方法がない。それが分かっていても、急成長の魅力に取り付かれる。そのため、様々な分野に進出する。そして、事業領域を広げすぎて、経営が苦しくなるという話は多い。

急成長は自己資本率の低下を招く。工場や生産の規模を拡大すると、それに応じた設備や在庫などの経費や人件費が急増し、借入金も膨らむからである。つまり、元金や利息の返済額が大きくなり、自己資本率の低下を招く。こうなると、業績が黒字でも、環境の変化で資金繰りがつかなくなり、倒産する可能性が高くなる。中小企業が急成長し、社屋と工場を新築し、社員を大量に新規に雇用すると、経営内容が悪化するというのはこのような状況を意味している。

このような状況になったら、拡大志向をすてて利益率の高い仕事だけを受け、身の丈にあった経営をするのが一番よい。そして、手形を減らしていくのが最善の方法である。そうすると資金繰りが楽になり、自己資本率が上昇する。一般的に、自己資本率が30%を超えると、現金決済だけで仕入れに必要な資金が賄えるようになる。自己資本を増強するために、販売先の絞込みも不可欠になる。掛売りせず、値引きせず、配送せず、訪問せずで、零細な取引先を淘汰することも必要になる。急激な事業拡張には、それなりのリスクがあることを常に認識することが重要である。(Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)