都内の中堅の業務用食品卸が民事再生法の適用を申請した。個人経営のそば屋を中心に顧客を増やし、さらに、食品スーパーに直営の惣菜売り場を出店して急成長した。惣菜売り場で蓄積したノウハウで、直営店を出店していない食品スーパーにも惣菜ビジネスのコンサルティングを提供するなど付加価値の高いビジネスを展開していた。そして、さらなる急成長を求めて、全国チェーンを展開する外食産業に焦点を移していった。

全国チェーンの外食産業は、食材納入業者にとって魅力ある大きな市場である。店舗数を掛け算すれば、自動的に大きな売り上げが計算できる。しかし、市場が大きいため数多くの納入業者が競争しており、一瞬たりとも気を抜くことはできない。メニューの変更があれば、待ったなしで対応する必要がある。顧客の要望を満たすことができないと、翌日には他の納入業者にとって代わられる。売り上げを失いたくないばかりに、厳しい要求も受け入れることになる。そのため、御用聞きのようなビジネスになってしまい利益率は非常に低い。

大量に安く提供するには、大量に安く仕入れる必要があるが、中堅の納入業者にはそれは不可能である。全国チェーンの外食産業のような大きな市場は、大手企業がビジネスをする市場である。中堅企業は、企業力で勝負が決まる消耗戦に参入すべきでない。小さな企業は小さな市場を選び、その中で高い占有率を確保するのが正しい戦略である。この企業の場合、食品スーパーに直営の惣菜売り場を出店するということに、焦点を合わせるべきであった。利益は企業存続のためのコストであるという認識を持つことが必要である。(Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)