ある著名なインターネット新聞が休刊した。日進月歩の情報技術の進歩に対応できなかったのが直接の原因といえるが、一番大きな問題は高収益体制を構築できていなかったことである。運営費を広告収入だけでまかなうという戦略は非常にリスクが大きい。しかも、記事を書くのがすべてボランティア市民である。会社を小規模で家業として運営できるならいざ知らず、会社の規模が大きくなって事業として運営するには、高収益体制を構築できなければ、市場から淘汰される。大手IT企業が自社の広告宣伝も兼ねて、このような草の根的なビジネスを支援するケースは多い。しかし、それは支援企業の業績が好調なときの話であって、業績が悪化すればそのような約束はたちまち過去の話になる。

無料ソフトの販売で業績を伸ばしているグリーやモバゲーの高収益構造を学ぶべきである。理想だけでは、ビジネスの世界を生き抜くことはできない。個人のウェブならいざ知らず、新聞社という公器になった以上、ボランティアが書いた記事をそのまま掲載することはできない。文章の校正も記事内容の裏づけも必要になってくる。そのための経費が増えていくのは当然である。また、どのような出版物であっても、お客様を呼べる著名人の記事が必要である。出演者がエキストラばかりの映画を見る人はいない。有名な大物俳優が主役で出ているから、その映画がヒットするのである。無料で配信するという理想を追い求めて、結局は休刊ということになれば、それは素人ビジネスだったと評価されるだけで終わってしまう。(Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)