花王がロシアに進出する。花王だけでなく、大手日用品メーカーは、途上国向の低所得層に照準を合わせて、低・中価格帯の商品・サービスの品揃えを強化している。どのような企業であっても、少子高齢化がすすむ国内市場にだけ焦点を合わせるわけにはいかない。しかし、政治の世界では話はまったく違っている。内需拡大が声高に叫ばれ、お金は天から降ってくるという錯覚を覚えるような大盤振る舞い。さらに、高速道路の料金を無料にするというおまけつき。完全に、サプライサイドの視点が欠如している。

国も企業も競争優位を強化しないと、日本の先進国の地位も危うくなる。先進国が得意としてきた自動車や家電製品等の工業製品も、発展途上国の追い上げが激しく、すでにエンジニアード・コモデティと称されるようになっている。液晶はシャープというイメージは、韓国のメーカーによって破壊されてしまった。国内の携帯電話メーカーの動きに注目していると、いつの間にか、ブラックベリーというカナダの携帯電話が世界市場の注目商品として躍り出た。国の競争優位の源泉は何か?それは、国民が共有する価値観と考えると分かりやすい。利便性を追求したマクドナルドのようなビジネスが米国を代表するなら、「もったいない」というメンタリティで、資源の有効利用を追い求める日本の技術に大きな未来がある。 (Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)