2010年 8月の記事一覧

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10年08月30日 09時46分47秒
Posted by: 戦略研究.com
ビジネス界では、もう吸収合併のニュースはめずらしくなくなった。ビジネスのグローバル化に対処するため、どのような業界であろうとも、生き残りに必要な規模の経済性を確保することが急務になっている。そして、グローバル市場に出て行くことが必要不可欠になってきた。グローバル化の必要性をいちはやく認識した韓国の指導者と、権力争いを続ける日本の指導者の違いは大きい。今の日本の政界は、まるで徳川の御三家が次の将軍を誰にするか、権力争いをしているようなものである。これでは、韓国との差は開くばかりである。

韓国の大躍進は、経済やビジネスだけでなく、スポーツ界や芸能界でも衝撃的である。しかし、日本では、事業仕分けというケチケチ作戦が進行中。日本の競争力維持に必要不可欠な科学振興費まで削減するというから恐れ入る。とにかく、すべてが内向きの視点からの発想。これからは、日本はニッチ市場であるという考え方をしないと、グローバル競争に負けてしまう。アサヒビールがオーストラリアの清涼飲料水を買収すると発表した。これでアサヒの海外売上比率は5%になったが、キリンの30%に比べると大きく出遅れている。スーパードライという素晴らしい商品があるのに、企業の一番の関心事は、グローバル市場よりもキリンとの国内市場のシェア争い。連日の猛暑でマスコミの報道も過熱気味。しかし、暑い夏もいつかは終わる。

また、国内の経営統合も、これからますます盛んになる。住友信託銀行と中央三井トラストが経営統合をして、大胆な費用削減に乗り出す。システムを統合し、管理系など機能が重複している部門の人員を営業に配置転換する。イオンが傘下の主力スーパーを合併して、店名もイオンに統一する。イオンは、伝統的にグループ入りをした企業の自主性を尊重してきたが、消費の低迷で経営環境は悪化。間接部門の合理化などで販売管理費を削減する必要にせまられており、構造改革に踏み込む。もう、傘下の各スーパーの自主性を重んじる余裕はない。

これからは、海外に出て行ってビジネスをするというリスクをとる努力と、重複した機能を整理し小さな本社を実現する努力が不可欠である。リスクはとらず、価格競争に耐えるため、競争力維持に必要なコストも削減して、既存のビジネスだけで生き残ろうという考えは通用しない。規模の経済性と小さな本社を同時に追い求めることが必要になっている。地球では、地球温暖化よりもさらに次元の高い地球規模の気候変動が進行中である。ビジネスも、地球規模の大きな変動が進行中であるという認識を持つことが必要である。
(Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)
10年08月23日 10時33分50秒
Posted by: 戦略研究.com
相変わらず政治の世界で混乱が続いている。選挙で掲げた高邁な理想は、すでに忘却のかなたに葬られたようである。長引く円高、格安航空会社の台頭、ロシア産小麦の禁輸と世界は激変しているのに、政界では権力争いが進行中である。プロ野球の弱小チームが努力の末、せっかく日本一になったのに、翌年は内部の混乱で弱小チームに戻ってしまうという例は多い。日本一になることは難しいが、その地位を維持することはさらに難しい。巨人に日本一の座を9年連続で維持させた川上監督のリーダーシップの素晴らしさを再認識させられる。

組織というものは、いったん出来上がると、奉仕すべき対象よりも、組織の存続のほうが最優先になるというやっかいな性質を持っている。奉仕する対象は国民なのに、そんなことは我関せずとばかりの権力争い。政界では倒産がありえないため、泥沼の戦いが延々と続く。ビジネスの世界では、お客様をほったらかしにして、社内で派閥争いをしていたら、会社は倒産への片道切符を手にしているようなものである。ビジネスの源泉は社内ではなく社外にある。そのためには、お客様の意見に耳を傾けて、商品を磨く必要がある。

組織とは玉石混交である。組織は一般的に、懸命に努力する人材が30%、ぶらさがりの人材が30%、その中間が40%という割合で構成されている。すると、ぶらさがりの人材の30%を除外して、残りの70%でビジネスを遂行すれば業績が大幅に上昇すると考えがちである。しかし、選ばれた70%の人材が、再び3:4:3の割合に分かれるという性質を持っている。とにかく、組織とはやっかいなものである。要するに、組織を維持するために、変化を阻止する動きが必ず現れる。

リアプロ型テレビ用のレンズユニットで世界市場をほぼ独占していた企業が、民事再生法の適用を申請した。テレビの市場が薄型に移るという環境の変化に対応できなかったのが、直接の原因である。もちろん単品経営のリスクを回避する戦略を構築できなかったことも大きい。ビジネスでも政治でも、発展に必要な智恵の源泉は常に組織外にある。組織内の問題解決に振り回され、環境の変化に対応できなければ、高邁な理想も国民の胸を打ち続けることはできない。(Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)
10年08月16日 10時43分04秒
Posted by: 戦略研究.com
寝具業界の老舗が民事再生法の適用を申請した。有名なデザイナーブランドを冠した高級寝具を市場に投入し、寝具市場にファッション性を持ち込み急成長した企業である。破綻までの経緯を読むと、消費者の動向と流通の変化を読めなかったとともに、ブランドビジネスによくある高コスト体質が大きな問題点であることがわかる。高コスト体質を改善することなく規模の経済性を追求し、急成長を求めると、やがて大きな問題点に遭遇する。

景気がなかなか回復しない。消費者の低価格志向に応えるため、規模の経済性で少しでもコストを下げようと、設備投資に無理をする。そのため、借入金が増え金利の支払いに苦労をする。当然、自己資本率は低下する。非上場の中小企業は、市場から資金を調達できないので、経営者が自ら増資するか、税引き後利益を貯めるしか方法がない。それが分かっていても、急成長の魅力に取り付かれる。そのため、様々な分野に進出する。そして、事業領域を広げすぎて、経営が苦しくなるという話は多い。

急成長は自己資本率の低下を招く。工場や生産の規模を拡大すると、それに応じた設備や在庫などの経費や人件費が急増し、借入金も膨らむからである。つまり、元金や利息の返済額が大きくなり、自己資本率の低下を招く。こうなると、業績が黒字でも、環境の変化で資金繰りがつかなくなり、倒産する可能性が高くなる。中小企業が急成長し、社屋と工場を新築し、社員を大量に新規に雇用すると、経営内容が悪化するというのはこのような状況を意味している。

このような状況になったら、拡大志向をすてて利益率の高い仕事だけを受け、身の丈にあった経営をするのが一番よい。そして、手形を減らしていくのが最善の方法である。そうすると資金繰りが楽になり、自己資本率が上昇する。一般的に、自己資本率が30%を超えると、現金決済だけで仕入れに必要な資金が賄えるようになる。自己資本を増強するために、販売先の絞込みも不可欠になる。掛売りせず、値引きせず、配送せず、訪問せずで、零細な取引先を淘汰することも必要になる。急激な事業拡張には、それなりのリスクがあることを常に認識することが重要である。(Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)
10年08月09日 10時42分29秒
Posted by: 戦略研究.com
商品の価値を示す価格は誰が決めるのか。「商品の価格はお客様が決めてくださる」と説いたのは、松下幸之助氏である。至言である。素晴らしい商品を安価に提供しても、お客様が購入してくれなくては、ビジネスは成立しない。米国のグランド・キャニオンで原住民が製作した工芸品を売っている土産物屋があった。誰が見ても素晴らしい工芸品なのに、全然売れない。そこで店主は、価格を三分の一にして販売するように、従業員に言い残して帰宅してしまった。残された従業員は三分の一という指示を間違えて、価格を3倍にして販売した。すると、工芸品が飛ぶように売れたという実話が残っている。

つきつめると、どのような商品であっても、価格は交渉で決まる。単価が10,000円の商品も10億円のプロジェクトも価格は交渉で決まる。ただ、購入者と販売者が直接交渉するか、しないかというだけの違いである。過去には、大阪の繊維問屋街で販売員がそろばん片手に、店頭でお客様と値段の交渉をする光景は普通にみられた。インターネットを使ったビジネスが普及し始めた頃、インターネットを利用して価格の交渉を可能にしたのが、米国のプライスラインである。消費者がインターネット上で航空会社と交渉して、売れ残った航空券を納得できる価格で購入するというシステムである。ネットオークションもこの流れの一つと考えることができる。

インターネットの黎明期に、バーチャル商店街や業界別検索サイトを考えた人物は多い。しかし、プライスラインのようにインタラクティブ・コミュニケーションという観点で、ネット上で価格交渉を可能にするビジネスを展開した企業は少ない。世の中には頭のいい人物はいるものである。米国からかなり遅れたが、日本でも価格交渉をネットで可能にしたサイトが次々と登場している。どのように商品を定義するかを熟考すると、交渉の対象になる商品は無限に存在する。シェフの創作料理の価格を消費者が決定するサービスがすでに登場している。これも消費者がシェフの発想力を価格で評価していると考えると、プライスラインのビジネスモデルに源流を見ることができる。

インターネットのおかげで、どのような商品であっても、販売している企業も驚くような知識量をもっている消費者が存在する。これからは、そのような消費者を取り込んで商品開発を進めることが重要になってくる。松下幸之助氏の「商品の価格はお客様が決めてくださる」という至言は、いつの世にも生きている。(Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)
10年08月02日 11時11分33秒
Posted by: 戦略研究.com
都内の中堅の業務用食品卸が民事再生法の適用を申請した。個人経営のそば屋を中心に顧客を増やし、さらに、食品スーパーに直営の惣菜売り場を出店して急成長した。惣菜売り場で蓄積したノウハウで、直営店を出店していない食品スーパーにも惣菜ビジネスのコンサルティングを提供するなど付加価値の高いビジネスを展開していた。そして、さらなる急成長を求めて、全国チェーンを展開する外食産業に焦点を移していった。

全国チェーンの外食産業は、食材納入業者にとって魅力ある大きな市場である。店舗数を掛け算すれば、自動的に大きな売り上げが計算できる。しかし、市場が大きいため数多くの納入業者が競争しており、一瞬たりとも気を抜くことはできない。メニューの変更があれば、待ったなしで対応する必要がある。顧客の要望を満たすことができないと、翌日には他の納入業者にとって代わられる。売り上げを失いたくないばかりに、厳しい要求も受け入れることになる。そのため、御用聞きのようなビジネスになってしまい利益率は非常に低い。

大量に安く提供するには、大量に安く仕入れる必要があるが、中堅の納入業者にはそれは不可能である。全国チェーンの外食産業のような大きな市場は、大手企業がビジネスをする市場である。中堅企業は、企業力で勝負が決まる消耗戦に参入すべきでない。小さな企業は小さな市場を選び、その中で高い占有率を確保するのが正しい戦略である。この企業の場合、食品スーパーに直営の惣菜売り場を出店するということに、焦点を合わせるべきであった。利益は企業存続のためのコストであるという認識を持つことが必要である。(Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)
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