【問 1】 正解 1
×ア 誤り。管理会社がる重要事項の説明義務を行う場合に、管理業務主任者を
して説明させなければならない(適正化法72条1項)。それは法定の業務である。
重要事項説明における管理会社と管理業務主任者との間で代理人とか復代理人と
かいう問題が出てくる余地は全くない。
〇イ 正しい。管理組合法人Aを代表する理事Cは、Aの代理人ではなく、Aの
代表者である。「代理」と「代表」は多くの共通点があるが、厳密には異なる。
代理の場合には、本人の行為と代理人の行為が考えられるが、代表の場合には、
代表者(機関)の行為のほか本人の行為というものは考えられず、代表者の行為
は即法人の行為とみなされる。したがって、不法行為の代理ということは認めら
れないが(代理は法律行為についてなされるから)、不法行為についての代表はあ
りうるのである。
 なお、この問題と直接関係はないが、区分所有者を代理するのは、管理組合法
人Aであり、その法人を代表するのが、代表理事である。代表理事は、法人を代
表するのであり、区分所有者の代理人でないことを、しっかりと理解すること。
×ウ 誤り。契約締結後に行為能力を喪失しても、その後に契約の効力が影響を
受けることはない。それは代表であろうが、代理であろうが、また、ある個人が
自分で契約した場合であろうが同じである。
 代理人は、行為能力者であることを要しないとされる(民法102条)。この規定
は、代表にも準用される。ということは、代表者Cが契約時に行為能力を喪失し
ていても、契約の効力には影響しない。つまり、契約は有効である。ただし、契
約時に「意思能力」を喪失していれば、代表行為は無効になることに注意するこ
と。
×エ 誤り。法律行為の要素に錯誤があれば、表意者に重大な過失がない限り、
その法律行為の無効を主張できる(民法95条)。代表においては、代表者の意思
(代理においては代理人の意思)で錯誤を判断する。管理業者がBかDかは要
素(法律行為の重要な部分)であると思われるので、Aは錯誤を理由に本件契
約の無効を主張できる。「取消し又は解除」できるという点が誤り。
 以上より、正しいものは、イの一つであり、1が正解。

【問 2】 正解 2
〇ア 適切。相続とは、人の死亡によってその人に属していた財産上の権利・
義務を受け継ぐことである。いわゆる包括承継(一般承継)である。区分所有
者の相続人に対して管理費の請求ができる。合併も包括承継である。
×イ 不適切。区分所有者から当該専有部分を賃借している者(占有者)は管理
費の支払義務はない。
〇ウ 適切。区分所有者は、マンションの共用部分、敷地等について他の区分所
有者に対して有する債権、規約や集会の決議に基づき他の区部所有者に対して有
する債権(管理費・修繕積立金等)について、区分所有者の特定承継人(売買や
贈与によって取得した者)に対しても行うことができる(区分所有法7条1項、
8条)。
×エ 不適切。2親等内の親族(兄弟姉妹や祖父母と孫など関係にある者)は、
マンションに同居しようがしまいが、管理費等について責任を負わない。夫婦・
親子関係でも同じこと。
以上より、不適切なものは、イ、エの二つであり、2が正解。

【問 3】 正解 3
×l 誤り。債務の弁済として給付をした者は、債務の存在しないことを知って
いたときは、その返還を請求できない(民法705条)。設問は、管理費月額を
15,000円であると誤認して支払っているので、その過払い分5,000万円につい
て返還請求できる。当事者の意思を無視して、次期の管理費として当然に充当
されるものではない。
×2 誤り。区分所有者が、5月末日に支払うべき管理費をその前の5月1日
に支払ったのであるから、期限前の弁済の問題である。これについて民法は、
その返還請求ができないとしてる(民法706条本文)。ただし、この場合、区分
所有者が錯誤によって期限前に支払った場合には、債権者(管理組合)は、こ
れによって得た利益を返還しなければならないとされていることに注意(同た
だし書)。
〇3 正しい。区分所有者Aが、他の区分所有者Bの管理費を立て替えて支払っ
た場合に、Aは、Bに対して有する求償権を有する。この債権は、規約や集会の
決議に基づき他の区部所有者に対して有する債権であり、区分所有者は、この債
権について、債務者の区分所有権及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有
する(区分所有法7条1項)。
×4 誤り。不法な原因のために給付した者は、その給付したものの返還を請求
することができない(民法708条本文)。いわゆる不法原因給付といわれるもので
ある。公序良俗に反する行為(無効な行為である(民法90条))をしておいて、後
で、それは無効だから返せというのは、自ら公序良俗に反する行為をしたことを
主張して法律の保護を受けることになり、不当だからである。だから、不法な原
因が受益者についてのみ存したときは、この限りではないとされている(同ただ
し書)。

【問 4】 正解 3
×1 誤り。Aが甲をBに売ったということは、AB間にマンションについて売
買契約が成立したということである。所有権は、原則として売買契約(物権の移
転の意思表示)のときに移転する(判例、民法176条)。いわゆる意思主義である。
所有権の移転登記は、所有権の移転の要件ではなく、第三者に対する対抗要件で
ある(民法177条)。
×2 誤り。契約を解除した場合、当事者は原状回復義務を負うが、ただし、第
三者の権利を害することができないとされる(民法545条1項)。ここでいう第三
者は、対抗要件を備えていなければならいというのが、判例である。したがっ
て、AがBの代金不払いを理由に売買契約を解除したときには、Aは、Cがマン
ションの移転登記を得ていれば、Cに対抗できないが、移転登記を得ていないと
きは、Cより先に登記をすることによって、マンションの明渡しを請求すること
ができる。
〇3 正しい。賃借人は、賃貸人の承諾がなければ、その賃借物を転貸すること
ができない(民法612条1項)。そして、賃借人が無断で第三者に賃借物を使用又
は収益させたときは、賃貸人は、賃借人との契約を解除できる(同2項)。ただし、
判例は、無断で賃借物を使用・収益させた場合でも、「背信行為と認めるに足り
ない特段の事情があるときには、解除できない」としている。よって、Aは、特
段の事情がない限り、Bとの賃貸借契約を解除し、Cに対してマンションの明渡
しを請求することができる。
 なお、Aは、Bとの契約を解除することなく、Cに対してマンションの明け渡
しを請求できる(判例)。つまり、契約を解除しなければ、Cに対して明渡しを求
めることができないという訳ではない。
×4 誤り。AがマンションをBに賃貸し、Bがそこに居住した場合、Bは、マ
ンションの賃借権について対抗要件を満たしたことになる(引渡しが対抗要件と
なる(借地借家法31条1項))。そうすると、後に、AがマンションをCに売りそ
の旨の登記をCに移転した場合でも、Bは、Cに対して賃借権を対抗できるの
で、マンションを明け渡す必要はない。つまり、Cの明渡しの請求は認められな
い。Cは、Bの賃借権の負担のあるマンションの所有権を取得したことになる。
そして、Cは、所有権の移転登記をしているので、Bに対して賃料の請求ができ
る。

【問 5】 正解 2
×1 誤り。請負契約により瑕疵があるときは、注文者Aは、請負人Bに対し、
相当期間を定めてその瑕疵の修補を請求できる。ただし、瑕疵が重要でなく、
かつ、その修補に過分の費用を要するときには、修補の請求はできない(民法634
条1項)。そして、注文者は、瑕疵の修補に代え、又は修補とともに損害賠償の請
求ができる(同2項)。しかし、「建物その他土地の工作物」の請負契約において
は、瑕疵を理由として契約の解除は認められない(635条ただし書)。
〇2 正しい。請負契約において、工事が完成しない間は、注文者は、いつでも
損害を賠償して契約の解除をすることができる(民法641条)。未完成の間の注文
者の解除権である。注文者が不要と思った工事を完成させる必要がないからであ
る。この場合は、「建物その他土地の工作物」の請負契約においても解除が認め
られていることに注意。
×3 誤り。請負契約により瑕疵がある場合には、建物その他土地の工作物の請
負人は、瑕疵について、引渡しの後5年間(鉄筋コンクリートなどの場合には10
年間)担保責任を負う(民法638条1項)。設問はマンションであるから、通常鉄
筋又は鉄骨造等と思われるので、引渡しから10年間担保責任を負う。
×4 誤り。管理組合法人Aの財産をもって、請負人Bに対する本件工事代金債
務を完済することができない場合には、当該マンションの各区分所有者は、原則
として、共用部分の持分の割合で、債務の弁済義務を負う(区分所有法53条1項、
29条1項)。

【問 6】 正解 3
×ア 誤り。マンション管理業者Bの被用者Cが、その事業の執行について第三
者に損害を与えた場合、Bは、使用者責任を負い(民法715条1項)、Cは、一般
の不法行為責任を負う(民法709条)。
×イ 誤り。竹木の栽植又は支持に瑕疵があることによって、他人に損害が生じ
た場合、第一次的に占有者が責任を負い、占有者が損害の発生を防止するのに必
要な注意をしたときは、所有者が第二次的に責任を負う(民法717条1項、2項)。
管理組合又は組合員は、占有者として、又は所有者として責任を負う。
×ウ 誤り。動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負
う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもって管理したときは、こ
の限りではないとされる(民法718条1項)。Fは、損害賠償請求をその犬の占有
者に対してすることはできないというのは、誤り。
〇エ 正しい。建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じた
ときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する(区分所有法
9条)。この場合には、管理組合又は組合員全員に対して、占有者又は所有者とし
て責任を追及することができる。しかし、設問は、その瑕疵が「専有部分に存し
たときには」とあり、この場合には、当該専有部分の区分所有者に対してのみ損
害賠償請求をすることができる(民法717条1項)。そして、管理組合又は組合員
全員に対してすることはできないことになる。
 以上より、誤っているのは、ア、イ、ウの三つであり、3が正解。