【1】株主資本主義(新自由主義)とデフレ経済

 我が国のバブル経済崩壊後、「失われた30年」があったのか?

しかも、日銀が未曾有の緩和政策を9年間続け、マイナス金利まで導入したにもかかわらず、デフレ経済がなぜ30年間も続いたのか。

当初は、バブル崩壊のさせ方と崩壊後の政府の対応が悪かったために、デフレ経済から脱却できなかったと思われていた。

米国が、同じバブル崩壊型の不況であるリーマンショックから僅か2年で脱却しているのに比べ、あまりにも長すぎた30年でした。この長さは、政府の無能さばかりが原因ではないことは言えるかもしれません。

それでは、30年間のデフレ経済の原因は、何か?最近、アナリストや経済ニュースで報じられたのは、政治の問題でなく、大企業経営者の経営方針の問題であるという考え方です。

それは、多くの大企業経営者が、株主資本主義(新自由主義)のような経費を削減して最大利潤を追求するような経営方針を採ると、より安いものを求め海外に生産拠点や部品調達を求め外注費など経費や人件費を圧縮する経営をするようになり、その結果、自国の購買力を低下させ、デフレ経済になるという考え方です。

その証拠に、バブル崩壊時には、政治家まで、「我が国は人件費が高い、物流費が高いから国際競争力が低くくなってしまっている」と言い出す始末でした。本来、政治家は、無能な経営者には退席してもらい、有能な経営者が誕生する土台やそれによるイノベーションが起こる土壌を築くべきではなかったのか!?

 この国は、無能な政治家と大企業経営者によって、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた国から韓国に一人当たり収入も抜かれ、先進国から中進国に落ちようとしている。なんと嘆かわしいことか。

 

【2】2018年からインフレ経済に変わった米国

 「大企業経営者の経営方針がインフレかデフレかを決める」と言う考え方によると、2018年から米国は、インフレ経済に入っているということです。今年から始まったウクライナ戦争で急に色々な物価が上がり、一時的にインフレになっているように思われていますが、データをきちんと分析すると、2018年より米国経済は、インフレ経済になっているそうです。もちろん、ウクライナ戦争でインフレが加速させていることは間違いないでしょうが。

 では、米国がインフレ経済に突入した理由は、何でしょうか?

 それは、GAFA(特に、グーグル)を中心として進めているステークホルダーバランス主義による経営のためです。

 ステークホルダーバランス主義とは、納入先・外注先(原価)、従業員(人件費)、銀行(営業外費用)、政府(税金)、株主(純利益)といったすべての会社の関係先に対する適正な分配を図ることを経営目的にしたものです。因みに、ステークホルダーバランス主義を六方よし、八方よし経営と言う場合もあるそうです。

 株主重視の最大利益を経営目的とした経営からすべての会社関係先に配慮したステークホルダーバランス主義による経営を経営目的とした経営にすることで、一人当たりの収入を上げていくことになり、その結果、インフレ経済になると言うことです。

 

【3】奇跡の経済成長期(戦後からバブル期)

 我が国も戦後から1972年まで高度成長を続け、1980年代もバブルが崩壊する1993年まで世界が同時不況になっているにも関わらず、丸で一人勝ちの様相を呈し、ジャパン・アズ・ナンバーワンとまで言われる状況でした。

 この時期の我が国の繁栄は、上記理論で考えると、江戸時代から引き継がれた三方よし経営と累進課税制度によるものと言うことになるではないでしょうか。

 三方よし経営の理念により、ステークホルダーバランス主義的経営となり、最高税率70%の累進課税制度により、高い役員報酬や配当をもらうより、従業員に分配した方がよいと言う考えになり、そのため従業員のモチベーションが上がり、それにより業績も上がり、事業拡大する好循環が生まれていました。

 

【4】結論

 我が国の経済を立て直し、一人当たり収入が増えるインフレ気味の経済成長をする体質に戻すためには、次のような経営と政策が必要なのではないでしょうか!?

  • 企業経営者は、三方よし経営に戻るべし
  • 政策は、行き過ぎた低金利政策や消費税率低減による景気刺激策は無意味
  • 政府は、ステークホルダーバランス主義を上場企業が採りやすいように誘導するとともに、少しずつ累進課税制度の最高税率を高めていくことです。