メディア報道には、世界的な景気停滞の記事が主流をなし、世界経済の先行きを考えると、国民は何ともいえない不安感をいつまでたってもぬぐえない。夢ばかり語った現政権も、現実社会の厳しさにジグザグ行進を続けている。学校の運動会では、先生が指導して、ジグザグ行進も真っ直ぐな行進になる。しかし、政界では、ジグザグ行進を真っ直ぐな行進に直す先生もなく、それぞれの議員が保身に走り、内輪もめばかりが先行している。「二番ではいけないのか」という歴史に残る名文句を残した事業仕分けも、まるでもぐらたたきのように、一つ削除すれば、新たに一つが誕生して、事態は悪化するばかり。このような事態になることは、始める前から誰もが分かっていたことである。

誰が考えても、これからは新興国のインフラ事業が大きく伸びていく。社会が豊かになれば、どの国でもインフラ整備が一番の優先課題のなるのは当然である。インフラ事業のような大規模な事業になれば、政治家の支援は不可欠である。韓国の大統領は、素晴らしいリーダーシップを発揮して、早々とアラブ首長国連邦から原子力発電所の建設プロジェクトを受注している。かつて、トヨタが米国で苦労しているのを知りながら、あれは政治の話ではないとして無関心を続けたわが国のリーダーや、感情論から脱原発と叫んだわが国のリーダーとの違いはとてつもなく大きい。この違いが、グローバル市場における両国の差につながっていると言っても過言ではない。

家電製品は、生活を便利にする機器という発想を転換する時代になっている。新興国のビジネスマンもスマートフォンを片手に、世界中を相手に事業をする時代では、生活を便利にするというハードの発想だけでは、信じられないくらいの低価格で、商品を市場に投入する国とは勝負できない。アメリカの太陽光パネルメーカーの破綻がこの現実を明白にしている。販売するのは、ハードではなくソフト、もっというなら、文化と一体になった商品を市場に投入するという発想が必要な時代になっている。つまり、コモデティから付加価値の付いた商品への発想の転換が必要である。

日本が世界に誇るコマツの工場は、国内外に8ヶ所あるが、機種ごとに設計図は世界に1枚しかない。現地向け専用機を作るのではなく、世界にあるコマツの工場で働く溶接工や塗装工を、日本に一堂に集め世界大会を開催し、一枚しかない設計図をもとに、コマツとしての商品を完成させるにはどうすればよいかを参加者に考え実行してもらう。宅配便のヤマトは、配達したほうが、受取人に「ありがとうございます」という、日本人以外にはなかなか理解できない考え方を現地配送担当者に理解してもらいながら、宅配というビジネスを海外で展開している。あるいは、ファナックのように国外には生産拠点を建設せず、国内で技術革新をすすめて、世界に誇る商品を世界市場に船積みするという戦略も正しい戦略である。

各企業のビジネスに相応しい戦略を構築すればよいのであるが、基本は、価格競争を避けて、コモデティーではなく、日本が誇る文化遺産を含めた商品を世界市場に出すという発想が必要である。(Written by Shigeo Sunahara of CBC, Inc.)