マンションの管理組合の役員として、理事と監事がいる。昔からこの役員になり
たくないという人が多く、今でもこのことは深刻な問題である。

 多くは、公平を期して順番にしているマンションが多い。しかし、管理組合の組
合員(マンションの区分所有者)がマンションに住んでいなくて(空室)、しかも
遠方に住んでいるため、現実に役員ができないとか、会社の所有(会社の寮)とな
っているため、しょっちゅう居住者が変わり、役員となれないとか、賃貸している
ため、マンションの管理に関心がなく、役員を事実上拒否しているとか、組合員が
高齢のため、現実的に役員ができないとか、様々の理由から役員を選ぶのに苦労し
ているマンションが多い。

 そこで、中には異例中の異例であるが、マンションの賃借人を役員としている管
理組合もある。確かに、法律(区分所有法)上は、役員は、区分所有者に限らない。
管理組合が第三者を役員として選任することはできる。

 しかし、国土交通省の標準マンション管理規約では、管理組合の役員は、組合員
に限っている。しかも、現にマンションに居住している組合員に限っている。標準
管理規約は、あくまで標準的なものであり、すべてこれに拘束されるものではない。
だから、法的には、賃借人を役員にすることはできる。

 それでは、何故標準管理規約が、役員を現実に居住している組合員にすることが
良いと考えているのか。そこには合理的な理由がある。

 まず、居住している組合員としているのは、現実に居住している者でなければ、
マンションの管理状況を把握するのが困難だからだ。この点は、マンションに居住
している賃借人でも管理状況は把握できるから同じだと言えなくもない。

 しかし、管理組合の役員は、快適なマンションライフを実現するために、マンシ
ョンの管理について重い責任を持っている。それは、所有者であればこそ適任とい
える。管理組合の役員になるということは、法律上は、管理組合と委任ないしは準
委任契約関係にある。マンションの管理を管理会社に委託している場合でも変わら
ない。
 したがって、役員としての任務については、管理組合に対して善管注意義務を負
い、これに反して管理組合に損害を与えると、管理組合に対して損害賠償の責任を
負うことを知らなければならない。

 少々の損害については、管理組合が損害賠償を請求することは現実にはないであ
ろう。それはお互い様であるからだ。しかし、損害が大きければそういうわけには
いかない。現実に損害賠償の問題が生じる。

 そういうことをも考慮して、標準管理規約は役員をマンションの組合員に限るの
としているのだ。損害賠償について、その役員のマンションが担保になるからだ。
最悪の場合、マンションを差し押さえて、競売することによって、損害を賠償して
もらうことができる。賃借人にはこのような担保はない。

 そうは言っても、現実に居住している組合員だけが役員となるとすると、居住し
ていない人との不公平、居住者の高齢化などがあり、役員問題は深刻である。

 そこで、国土交通省は、昨年の4月からマンションの「管理者」を組合員以外の
第三者に委託する方式を検討している。「管理者」とは、区分所有法上の表現であ
り、管理組合の理事長をイメージすればよい。

 国道交通省は、「管理者」として、マンション管理士や管理会社を想定している
ようだ。少なくとも、賃借人よりはましであろうが、色々問題も多い。

  いずれにしても、管理組合の役員問題は、早急に解決を図るべき問題である。

 ※エースマンション管理士ホームページhttp://acemansyonkanri.law.officelive.com/