今はそうでもないようだが、弁護士は、机と椅子があれば仕事は誰かが持ってき
てくれた時代があったようだ。弁護士になりさえすれば、食っていけると。ただし、
弁護士になるための司法試験は、狭き門で、激烈な競争試験だった。

 大の大人が仕事もせずに、朝から晩まで、机に向かって試験勉強をしていた。
この人は、こんな司法試験に時間を費やさずに、会社勤めした方がずっと力が出
せるのではないかと思われる人もいた。

 私は、この試験に挫折して、バブル華やかなりし頃、宅建試験の講習をする会
社を作り、講師を企業に派遣し、その企業の支店・営業所で宅建の講習をすると
いう仕事をしていた。

 講師は、全員司法試験の受験生だった。専門誌で講師を募集し、東京、大阪、
福岡を拠点にして、そこから講師を派遣する。北は青森から南は鹿児島まで企業
の支店・営業所において、宅建の講習を行っていた。

 講師の応募の要件として、司法試験の択一試験を1回でも合格していることだっ
た。択一試験に合格しているぐらいであるから、一応法律の知識は備わっている。
後は、宅建の科目を自分で勉強しながら、講師としての必要な講習(研修)をす
る。

 講習のやり方等を十分説明してから、企業に派遣するのであるが、そこに、個
人の能力の差が出てくる。ここでの能力は、人を指導する能力、人を説得する能
力、人をやる気にさせる能力、であろうか。

 初めての授業の日から評判の良い講師もいるが、すぐに講師を変えてくれと言
われる講師もいる。その点企業は講師の評価については非常にシビアだ。

 一応法律の知識はあるのであるが、素人相手に、法律を分かりやすく解説する
ということがなかなかできない人がいる。自分も最初に法律を勉強したときは、
散々苦労して理解したはずである。それを忘れて素人相手にテキストの棒読みに
近いような講義をする奴がいる。いくら注意しても直らない。

 相手が理解しているかどうかは相手の顔を見ていれば分かるはずであるが、そ
れが分からない。  

 こいつは弁護士しかできないとい思われる奴がいるのだ。司法試験は、法律の
解釈をペーパーでテストする試験だ。その解釈だけは一応できるという奴が合格
する。そいつが、他には何の能力もないということは分からない。

 東京、京都、大阪、福岡にある国立大学を出た人もたくさん講師として雇って
いた。もちろん、私大を出た講師もたくさんいた。その講師としての能力は、世
間でいう大学の評価とは全く連動していなかった。

 多くの講師たちが、今弁護士をやっている。弁護士としての評価は、今やって
いるその仕事の内容によって評価しなければならない。決して、過去に出た大学
で評価してはならない。

 世間では聞きもしないのに、過去の出身大学を名乗る奴がいる。それは、今の
あなたの仕事や立場とどういう関係があるのかと問いたい。20歳の前半に出た大
学が、30年、40年経った今のあなたを語るのに必要があるのかと言いたい。

 本当に今を語ることのできる人は、そういうことは言わない。今、何も語るこ
とのない奴に限って自慢げに話すのだろう。

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