【問 36】 正解 2

〇1 正しい。管理組合法人は、その名称中に管理組合法人という文字を用いなければ ならない(区分所有法48条1項)。

×2 誤り。管理組合法人は、特別決議と主たる事務所の所在地で登記をすることによっ て成立する(区分所有法47条1項)。そして、登記事項は、目的及び業務、名称、事務所 の所在場所、「代表権を有する者」の氏名、住所及び資格等である(同3項、組合等登記 令2条2項)。だから、代表権のない理事や監事は登記をする必要がない。理事であって も規約等によって代表権のない理事を定めることができる(区分所有法49条5項)。

〇3 正しい。理事は、管理組合法人を代表する(区分所有法49条3項)。その職務行為 については、代表者の行為は法人の行為とみなされるので、理事がその職務を行うにつ いて第三者に損害を加えた場合には、法人が不法行為責任を負い、その損害を賠償しな ければならない

 (問1の解説イ参照)。この点について、区分所有法47条10項は、一般社団法人及び 一般財団法人に関する法律の第78条を準用しているが、理論的に当然のことであり、 確認的に規定しているにすぎない。なお、従来は、民法に法人一般の規定が置かれて いたが、平成18の改正により、その法律が設けられたのである。

〇4 正しい。管理組合法人は、建物の全部の滅失や建物に専有部分がなくなったこと によって解散する(区分所有法55条1項1号、2号)。この場合には、建物の専有部分が なくなるので、区分所有者そのものがなくなるから、清算手続きが終了すると管理組合 も消滅する。しかし、集会の決議(特別決議である。区分所有法55条2項)で管理組合 法人が解散することもある(区分所有法55条1項3号)。この場合には、法人の解散で あり、区分所有法3条の団体としての管理組合が解散しているわけではないから、管 理組合はなお存続する。特別決議で管理組合が法人格を取得し、特別決議で法人格 を失うだけである。

【問 37】 正解 4

〇1 正当な理由が必要。専有部分の修繕工事に関し、必要な調査を行うため、理事 長が修繕箇所への立入りを請求したが、その専有部分の区分所有者がこれを拒否す る場合には、正当な理由が必要である(標準管理規約17条5項)。

〇2 正当な理由が必要。階段室をエレベーター室に改造することは、敷地及び共用部 分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)に該当し(標準管 理規約47条3項2号)、特別決議が必要である。この特別決議において、専有部分の使 用に特別の影響を及ぼす場合には、その専有部分の区分所有者の承諾が必要である が、承諾を拒否するときは正当な理由が必要である(同7項)。

〇3 正当な理由が必要。敷地及び共用部分等の管理や共用部分である窓ガルス等の 改良の管理を行う者(通常管理組合である)は、管理を行うために必要な範囲内におい て、他の者が管理する専有部分又は専用使用部分への立入りを請求することができる (標準管理規約23条1項)。この立入りを請求された者は、正当な理由がなければこれ を拒否してはならない(同2項)。よって、管理組合がバルコニーの防水工事を行うため、 区分所有者の住戸に接続するバルコニーへの立入りを請求した場合に、その区分所有 者がこれを拒否する場合には、正当な理由が必要である。

×4 明文で正当な理由は必要とされていない。理事長は、議事録を保管し、組合員又 は利害関係人の書面による請求があったときは、議事録の閲覧をさせなければならな い。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる(標 準管理規約49条3項、電磁的方法が利用可能であれば、別個に49条5項に規定され ている)。区分所有法では、議事録を保管する者は、利害関係人の請求があったときは、 「正当な理由がある場合を除いて」、議事録の閲覧を拒んではならないと規定されてい る(区分所有法42条5項、33条2項)。ということは、正当理由があれば閲覧を拒否でき るということである。利害関係人の中には当然に区分所有者も含まれる。正当な理由と いうのは、閲覧請求権の濫用と認められるような場合である。  標準管理規約49条3項は、閲覧を拒否できる場合について規定していないだけであり、

「正当理由」があるのに、拒否できないというものではない。正当な理由があれば当然に 閲覧の拒否ができる。

 設問は、組合員からの総会議事録の閲覧請求及び閲覧の日時、場所等の申出が「不 相当な場合」とあるから、閲覧を拒否できる正当理由があるので、理事長はこれを拒否 できる。

※ 設問は、本文で「正当な理由」が必要とされないものはどれかと聞いて、肢4は、正当 な理由があれば、閲覧の拒否ができるという内容になっており、実質的には正当な理由が 必要とされている。この肢4も正当な理由が必要とされているものと言ってもよい。

 この肢4を正解とするためには、明文で「正当な理由」が必要と規定されていないものは どれか、と聞いているものとして答えるしかない。

【問 38】 正解 3

×1 不適切。区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者(賃借人や使用借人)は、 会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には、集会に出席して意見を述べる ことができる(区分所有法44条1項、標準管理規約45条2項)。専有部分の賃貸借契約 において、管理費相当額の負担をすると約束した場合でも、それは、あくまでも賃貸借契 約の当事者間の約束であり、管理費については、賃借人は利害関係人ではない。

×2 不適切。管理規約の変更についての集会における決議要件を、区分所有者及び議 決権の各4分の3以上を変更することはできない(区分所有法31条1項、標準管理規約 47条3項1号)。

 問35の肢2で述べた通りである。

〇3 適切。集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、「区分所有者 及び議決権の各過半数」で決する(区分所有法39条1項)。これを普通決議という。この 普通決議については、規約で別段の定めができるから、「出席組合員の議決権の過半数」 に改めることができる。標準管理規約47条2項は、同じ規定を置いている。ただし、この場 合、定足数(議事を行うために必要な最小限度の出席者数をいう)についても、一定の人 数を定めておくべきである(標準管理規約47条1項)。そうしないと、大規模なマンションで も3人出席して2人が賛成して総会の決議とすることができるからである。

×4 不適切。管理者は、集会において、毎年1回一定の時期に、その事務に関する報告 をしなければならない(区分所有法43条)。それを受けて、理事長は、通常総会を、毎年 1回新会計年度開始後2ヶ月以内に招集しなければならないとされている(標準管理規約 42条3項)。総会を開かずに、書面による報告に変えることはできない。

【問 39】 正解 3

×1 誤り。構造上及び機能上、独立`性を有する建物部分(倉庫)ではあれば、その一部 に他の区分所有者らの共用に供される設備(電気、水道等のパイプが通つている)が設置 されているとしても、倉庫の排他的使用に格別の制限ないし障害を生じないときは、専有 部分として区分所有権の目的となり得る。というのが判例の趣旨である。過去に何度も出 題されている。

×2 誤り。専有部分が賃貸ざれ暴力団事務所として使用されていることを理由に、賃貸 借契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求する訴えを提起することができる(区分 所有法60条1項)。この場合、集会において特別決議が必要であり、その決議をするに おいては、あらかじめ、弁明の機会を与えなければならないとされている(区分所有法60 条2項、58条2項、3項)。占有者(賃借人)と賃貸人を共同被告として訴えがなされるの で、双方に弁明の機会を与えなければならないのかという争いがあった。通説は違反者 である占有者(賃借人)に弁明の機会を与えれば足りると解していた。それを判例が認 めたのである。そして、原告が勝訴すると、占有者(賃借人)は原告に引渡し、その後遅 滞なく、原告から賃貸人である区分所有者に引き渡すことになっている(区分所有法60 条3項)。

〇3 正しい。管理規約の規定に基づいて、区分所有者に対し管理費の支払いが義務 づけられ、月ごとに所定の方法でそれが支払われる場合に、その管理費の債権は、基 本権たる定期金債権から派生する支分権として消滅時効にかかるとして、判例が争い に決着をつけた。つまり、民法169条に定める債権に当たるものとしている。同条は、年 又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、5年 間行使しないときは、消滅するとなっている。だから、月々の管理費の債権は、その月々 から、5年を経過すると時効にかかるということである。

×4 誤り。管理組合においては、訴訟をする場合、原告(あるいは被告)となることがで きるのは、以下の場合である。①組合員全員が共同原告となることができる。②管理者 を選任すば、管理者も原告となることができる(区分所有法26条4項)。また、③差止請 求等においては、管理者又は集会において指定された区分所有者も原告となることがで きる(区分所有法57条3項、58条4項、59条2項、60条2項)。④法人化されているとき は、法人も原告適格が認められる(区分所法47条8項)。このように、原告(あるいは被 告)となることができることを訴訟追行権という。

 法人格を取得していないが、団体としてまとまりのある団体を権利能力なき社団という。

団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員が変更しても団体が存続し、 代表者・総会の運営・財産の管理方法が確定している、といった要件を満たしている場 合に認められる。マンション管理組合、町内会、同窓会、政党などである。

 権利能力なき社団であるマンション管理組合について原告適格が認められるかどう かについては、区分所有法上は、むしろ認めていないのではないかと思われていたの ですが、平成23年2月15日の判決(管理組合が区分所有者に対する損害賠償の請求 事件)で原告適格を認めた。原審の東京高等裁判所は、原告適格を否定したのですが、 最高裁判所第三小法廷は、原判決を破棄して、本件を原審に差し戻したのである。