先日古いパソコンが故障したので、新しいパソコンに変更した。ところが、

そのせいで、前にブログで公開した平成25年度の宅建試験の解説が改行

されずに、ずっと繋がったままになってしまい、大変読みずらくなってしまっ

た。宅建業法の解説は何ら変更されていないのに、権利関係と法令その他

は変更されてしまった。ワードから同じように貼り付けたのに、なぜ変になっ

たのか、さっぱり分からん。

 新しく入力して改行したら、勝手に一行開いてしまう。これも分からん。

これを参考にして下さっている方々には大変ご迷惑をおかけしました。

再び、権利関係を二回に分けて公開します。

 今年の権利関係の問題は難しかった。宅建用のテキストに載っていない

問題や、過去に出題されたことのない問題を正解の肢にするなど、点数を

取りにくくしていた。したがって、14問中7問正解すれば十分だ、その代わ

宅建業法の問題はちゃんと勉強していれば全問とれる問題だった。

 平成 25年度の合格点は33点である。前年度も33点であった。しかし、前

度は宅建業法が難しかった。いきなり個数を数えさせる問題が5問出題され、

中身も難しかった。今回は、個数を数えさせる問題は4問出題されたが、比較

的やさしい問題だった。今年度は、権利関係が難しかったというのは既に指摘

したが、プラスマイナ スで合格点が同じになった。問題が難しかったとか易しか

ったとかは何で判断するかというと、それは、過去に出題された問題が正解の肢

に多かったかどうか。基本的な問題を正解の肢にした問題が多かったかどうかと

か、いろいろなことを総合的に判断する。

 しかし、過去問(できれば10年分ぐらい)をしっかりやっていれば、合格点は軽く

取れる。過去問をやるというのは、問題の肢4つすべてを納得のいくまで理解す

るということである。ということは何回も繰り返しやるということである。単に問題を

解いて答え合わせをしてお終いでは、過去問をやったことにはならない。ただし、

権利関係(特に民法)の問題は、範囲が広く、時にとんでもない難 しい問題が出

題される。その他どうでもよい問題やテキストに書いていない問題などを含める

と、50問中5問ぐらいはある。これらの問題はやる必要がな い。このような問題

をやることは時間の無駄である。

 くれぐれも自覚してほしいのは、何も難しい問題が解けなかったから不合格に

なったということではない。基本的な問題や過去に何度も出題された問題を 落と

しているから不合格になったということである。

エースビジネス学院   民本廣則

【問 1】 正解 2

×1 規定されていない。意思表示に法律行為の要素の錯誤があった場合は、

その意思表示は無効となる(民法95条本文)。取り消すことができるとは規定

されていない。

○2 規定されている。贈与者は、原則として瑕疵担保責任を負わない(民法

551条1項本文)。ただし、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在

を知りながら受贈者に告げなかった場合は、その限りではないと規定されて

いる(民法551条1項ただし書)。

×3 規定されていない。売買契約の目的物に隠れた瑕疵がある場合には、

買主は、売主に対し瑕疵担保責任を追及できるが、その内容は、損害賠償と

目的達成できないときの契約解除であり、代金の減額を請求することができ

るという規定はない(民法570条、566条1項)。

×4 規定されていない。多数の相手方との契約の締結を予定してあらかじめ

準備される契約条項の総体であって、それらの契約の内容を画一的に定める

ことを目的とするものを約款と定義される。この約款の定義については、民法

に規定されていない。しかし、法制審議会では、この約款について、民法に新

設することが検討されている。

 この約款に基づく契約の場合は、内容が画一的に定まっているので、本人の

利益を害するおそれがなく、双方代理等の禁止の規定は適用されないと解され

ていることに注意。

【問 2】 正解 4

×1 誤り。私権の享有は、出生に始まる(民法3条1項)。つまり、出生すると人

として私法上の権利義務の主体となる。私権とは、民法(私法)上の権利であり、

物を所有する権利や損害賠償請求権など多数の権利をいう。乳児でも不動産

を所有することができるのである。

 法律は私法と公法に区別できるが、公法上の権利を公権という。公権には国家

の刑罰権や国民の参政権(選挙権・被選挙権)などがある。参政権などは一定の

年齢以上の者にしか認められていない。

×2 誤り。営業を許可された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の

行為能力を有する(民法6条1項)。したがって、営業を許可された未成年者が、そ

の営業のための商品を仕入れる売買契約を単独で有効に締結することができる。

×3 誤り。男は18歳 に、女は16歳になれば婚姻することがで きる(民法731

条)。そして、未成年者が婚姻するには、父母の同意が必要であるが(民法737条

1項)、父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りるとされる(同2

項)。必ず父母双方の同意が必要というのは、誤りである。

 なお、父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示すること

ができないときも、他の一方の同意だけで足りるとされる(同2項)。父母双方が知

れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときは、同意

なくして婚姻できると解すべきである。

○4 正しい。親権者は、子の財産を管理し、またその財産に関する法律行為につ

いてその子を代表(代理)する(民法824条本文)。しかし、親権を行う者とその子

の利益が相反する場合には、代理権はなく、子のために家庭裁判所が特別代理

人を選任する(民法826条1項)。また、親権者が数人の子に対して親権を行う場

合、その一人の子と他の子との利益が相反するときは、一方の子のために、特別

代理人を選任しなければならない(同2項)。したがって、CとDの親権者である母

EがCとDを代理してBとの間で遺産分割協議を行っても、無権代理として無効で

ある。しかし、子が成年に達した後は追認することができると解されている(民法

113条、判例)。設問は子達が有効な追認がない限り無効であるというのは、正

しい。

【問 3】 正解 4

○1 正しい。甲土地が他の土地に囲まれて公道に通じない場合、甲土地の所有

者Aは、公道に出るために甲土地を囲んでいる他の土地を通行できる(民法210

条1項)。いわゆる囲にょう地通行権である。この場合、甲土地を囲んでいる他の

土地を自由に選んで通行できるわけではなく、通行の場所及び方法は、通行権を

有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを

選ばなければならないとされている(民法211条1項)。

○2 正しい。甲土地が共有物分割によって公道に通じなくなった場合、Aは、公道

に出るためには、他の分割者の土地のみを通行することができる。そして、通行の

ための償金を支払う必要もない(民法213条1項)。この場合、土地の分割のとき、

あらかじめ通路を確保して分割すべきであり、それをせずに、他の土地を通行でき

るとするのは、不当だからである。

○3 正しい。囲にょう地通行権は、他の土地に囲まれて公道に通じない甲土地の

ために法律が認めた当然の権利であり、契約によるものではない。Aが、他人が

所有している土地を通行するために当該土地の所有者と賃貸借契約を締結した

場合、契約の効果として賃借権が発生し、Aは当該土地を通行することができる。

甲土地が公道に通じているか否かにかかわらず、契約を締結すれば、契約の効

果として、通行できるのである。

×4 誤り。この問題は、通行地役権の問題である。通行地役権は、他人との契

約により、他人の土地を通行できる権利であり、物権の一種である。3の賃借権

は、賃貸借契約という債権契約により、通行できる権利が発生するが、地役権は、

物権契約により、通行地役権が発生する。この通行地役権は、契約によらずに時

効によっても取得することができる。ただし、時効によって通行地役権を取得する

ためには、「継続的に行使され、かつ、外形上認識がすることができるものに限る」

という要件がある(民法283条)。ここでいう継続的に行使されというのは、承役地

たるべき土地の上に通路の開設があっただけでは足りず、その開設が要役地所

有者によってなされたことを要するというのが、判例である。設問は、甲土地の隣

の所有者が自らが使用するために当該隣接地内に通路を開設しており、時効

取得を主張する要役地の所有者Aが通路を開設しているわけではないので、Aは

時効によって通行地役権を取得できないのである。

 設問は、他人の土地を通行できる場合の民法の規定を幅広く聞いている。1と2

は、相隣関係の囲にょう地通行権の問題、3は、隣地の所有者と賃貸借契約を締

結してその土地を通路として利用する方法があるということ。4は、地役権の時効

取得の問題である。その前提として契約(物権契約)によって、隣地を通行できる

地役権という用益物権というものがあるということの知識が必要である。1、2、3

は基本的な問題であるが、4は難しい問題である。消去法で4を正解とすべきであ

るが、それにしても難しい問題である。

【問 4】 正解 4

×1 誤り。賃借人が造作の買取請求権を行使した場合、賃貸人と賃借人の間で

造作について売買契約が成立した場合と同じ関係が生ずる。お互いに同時履行

の抗弁権を取得し、また、賃借人は、造作について留置権を取得する(民法295

条1項)。賃借人の造作買取代金債権は、造作に関して生じた債権だからである。

この場合、造作とともに建物についても留置できるかといえば、判例は否定する。

賃借人は、建物から取り外して造作についてのみ留置することができるのである。

建物を留置することはできない。

 ここで注意してほしいのは、賃借人が建物に費用(必要費・有益費)をかけた場

合、賃借人は、その費用の返還請求権を有する場合があるが、賃貸人がその費

用を支払うまでは、賃借人は、建物について留置権を有するというこである。造作

は建物とは別個独立の物であるが、費用は建物そのものにかけたものだからで

ある。

×2 誤り。第1の買主の損害賠償請求権は、売主の債務不履行に基づく債権で

あり、留置権が発生する「その物に関して生じた債権」ではないから、当該不動産

を留置することはできない。また、この場合、留置権を認めると、不動産の二重譲

渡の場合に登記をもって対抗要件とする考えにも矛盾する。

×3 誤り。1で見たように、費用については、建物について留置権が発生すると言

ったが、それはあくまでも、賃貸借契約の継続中に費用を支出した場合である。留

置権は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない(民法295条2項)

とされており、建物の賃貸借契約が賃借人の債務不履行を理由に解除された後に、

賃借人が建物に関して有益費を支出した場合にも、この規定の趣旨から留置権を

否定するのが、判例である。この場合、占有が不法行為によって始まった場合では

ないが、民法295条2項の規定の趣旨を類推適用しているのである。

○4 正しい。建物の賃借人が建物に関して必要費を支出した場合、賃借人は、そ

の建物については、今まで見たように、留置権が認められるが、その敷地について

は、留置権は認められない。しかし、判例は、建物の留置権の反射的な効果として、

敷地を占有できるが、その敷地の賃料相当分については、不当利得として、敷地所

有者に返還しなければならないという。そして、建物所有者ではない土地の所有者

からの土地の明渡請求に対しては、その敷地を留置することはできないという。

この問題も非常に難しい問題である。土地と建物は、別個の物であり、建物に対す

る留置権は土地には及ばないが、建物を留置するためには、敷地から取り外して留

置するわけにはいかないので、その反射的な効果として、敷地を占有できるとしてい

る。しかし、敷地の所有者が建物の所有者と異なる場合に、その者からの土地明渡し

は認めざるを得ないのである。

【問 5】 正解 2

×1 誤り。債権者が抵当権の実行として担保不動産の競売手続をする場合には、

被担保債権の弁済期が到来している必要がある。物上代位も抵当権の実行の一

つであり弁済期が到来している必要がある。したがって、対象不動産に関して発生

した賃料債権に対して物上代位をしようとする場合には、被担保債権の弁済期が

到来している必要はないというのは、誤り。

○2 正しい。借地上の建物に抵当権を設定した場合、特段の事情がない限り、抵

当権の効力は当該建物のみならず借地権についても及ぶ。建物所有のために土

地の借地権は、その建物所有権に付随し、これと一体となって一つの財産的価値

を形成しているものだからである(民法370条本文、判例)。

×3 誤り。抵当不動産の不法占有者に対しては、抵当権は、抵当権設定者に代

位して、または抵当権に基づいて直接、妨害排除請求権を行使することができる

(判例)。

×4 誤り。抵当権について登記がされた後に、各抵当権者の合意により抵当権の

順位を変更することができる。ただし、利害関係人の承諾が必要であるとされる(民

法374条1項)。

【問 6】 正解 4

×1 誤り。債務を債務者以外の第三者が弁済した場合、弁済した者は債務者に

償することができる。この弁済者の求償権を確保するために、弁済者は、債権者が

有する権利を代位することができる(民法499条、500条)。これを弁済による代位

(または代位弁済)という。そして、代位の利益を受ける者が数人いる場合について、

その保護すべき必要の強弱に応じて代位の順位と割合を定めている。保証人と物

上保証人との間では、その頭数に応じて代位する(民法501条5号本文)。したがっ

て、設問では、保証人Cは、物上保証人D及びEに対して、1,000万円を限度で求

償てきるにすぎない。

×2 誤り。A銀行がDの不動産の抵当権を実行して債権全額を回収した場合、物

上保証人Dは保証人Cに対して、1で見た通り、500万円を限度として求償するこ

とができる。

×3 誤り。保証人は、あらかじめ抵当権の登記にその代位の付記登記をしなけれ

ば第三取得者に代位できないとされる(民法501条1号)。しかし、保証人がまだ弁

済もしていないのに、あらかじめ代位の付記登記を保証人に求めるのは妥当では

なく、保証人が弁済したときは、代位の付記登記をしなければ、その後の第三取得

者に対抗できないと解されている。第三者がDの所有する担保不動産を買い受けた

後(第三取得者が出現した後)、保証人Cが弁済した場合には、保証人は代位の付

記登記をしなくても、当該第三者に対して債権者A銀行に代位することができる。

○4 正しい。第三取得者は保証人に対して代位しないとされている(民法501条2

号)。第三取得者は、債務者が弁済しない限り担保権を実行されるのを覚悟すべき

であり、保証人があっても安心すべきではないという趣旨である。そうすると、Eの担

保不動産を買い受けた第三者(第三取得者)がA銀行に対して債権全額を弁済して

も、当該第三者は、保証人Cに対して、求償できないということになりそうである。し

かし、債務者Bが抵当権を設定した場合に、その抵当目的物を取得した第三取得

者であれば、この条文通りに考えてもよい。ところが、設問は、物上保証人Eから担

保不動産を取得した第三者(これも第三取得者であることに変わりはない)である。

この場合には、条文の立法趣旨からも文言通りに解釈するわけにはいかない。こ

の場合の第三取得者に保証人を当てにすべきではないということは言えない。

上保証人は保証人に求償できるのに、物上保証人から買い受けた者は保証人に

求償できないというのは、著しくバランスを欠くことになるからである。したがって、

ここでいう第三者は、物上保証人と同じように、保証人Cに対して、その割合に応じ

て求償することができるというべきである。

 この問題も非常に難しい問題である。試験直後には、各学校の解答も一致しなか

った。4を条文通りに解釈して、誤りとしたものもあった。4を誤りとすると、他を正解

にしなければならないので、1や3を正解とするものもあった。しかし、これは明らか

に誤りである。この肢4については、明確な判例もなく、これについて、はっきりと書

いてある専門書も少ない。このような問題を正解の肢として出すのはどうかと思う。

とにかくこの年の民法の問題は難しい問題が多かった。

【問 7】 正解 3

○1 正しい。保証人が期間の定めのある建物の賃貸借の賃借人のために保証契約

を締結した場合は、賃貸借契約の更新の際に賃貸人から保証意思の確認がなされ

ていなくても、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情がない限り、更新後の賃

借人の債務について保証する旨を合意したものと解される。判決文(平成9年11月

13日最高裁判例)の通りである。

○2 正しい。保証人が更新後の賃借人の債務についても保証の責任を負う趣旨で

合意した場合には、保証人は未払い賃料の支払義務を負う。1は賃貸人から保証意

思の確認がない場合も、特段の事情がない限り更新後も保証する旨が合意されたと

解されているが、2は更新後について保証する合意がなされているのであり、保証す

る責任がある。

×3 誤り。保証の範囲は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他債務

に関する従たるすべてのものに及ぶ(民法447条1項)。したがって、賃料に限らず賃

借人が賃借している建物に対する不法行為によって発生した損害賠償債務にも保証

人の責任は及ぶ。これは判決文と関係なく、保証の基本的な問題である。判決文と関

係なく正解に至る問題である。

○4 正しい。判決文は、賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に

反すると認められる場合を除き、保証人は更新後の賃借人の債務について保証の責

任を負うと言っており、賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反

すると認められるときは、保証人は責任を負わない。例えは、更新前において、既に賃

料の延滞が相当あり、このことについて、賃貸人が、ことさら保証人に告げずに更新し

たような場合には、更新後の賃借人の債務については、保証人は責任を負わないで

あろう。

エースビジネス学院   民本廣則

http://www.acebusinessgakuin.com