クライアントのお寿司屋さんに行くと必ず、スポーツ新聞が数誌あります。お邪魔させていただきますと、必ず皆さん必死に読んでいます。そこまで真剣に読まなくてもと思うのですが、それには理由があります。

お寿司屋さんにお越しになるお客様は共通してスポーツが好き、特にゴルフ好きの方が多いそうです。だから、常に情報を頭の中に入れて接客をするそうです。また情報だけでは面白くなく、実際に自らゴルフを始められるという方が多いようです。

一般的には、日経新聞を読みなさいと言われますが、寿司屋さんではスポーツ新聞。常にカウンター越しにスポーツに関する会話がされています。

スポーツに関することが一番当たり障りがないからでしょう。逆に、野球の話だけは極力しないようにしているそうです。これも理由があります。お客様の好みのチームがまちまちなので、どこかのチームの話になると良くないですし、また時にはお客様同士の喧嘩にまで発展します。だから野球は禁句!

私も以前の大手経営コンサルタント会社では、クライアントのところで野球の話はしないようにというのが教えでした。理由はお寿司屋さんと同じです。

好きなスポーツの勉強を新聞から行い、それをお客様との会話の中で新しい情報を手に入れる。その新しい情報を次のお客様に使用するという好循環が生まれます。

お寿司屋さんで売上を上げるには、板さんのトークが大事です。むっつり怖い顔では注文してくれません。快適な空間と会話で上手に乗せて、追加の注文をどんどんいただくことです。

喜ばせたり、楽しくさせると売上は上がります。技術論よりもこの接客トークができるかどうかが大事だそうです。結局、独立して成功される方は、このことができる人だそうです。

腕や技術だけが良くても経営はできません。売らないとお金が入ってこないのですから、会話やトークも大事になってきます。

最初から独立志向の高い人は、このことを真剣に学ぼうとされます。寿司を握る技術はどの寿司屋さんに入っても教えてくれます。しかし、お客様とどのような会話をし、タイミング見計らいおすすめをしたり、追加の注文をいただくかは、自分がお客様の前に立って自分で習得しない限りわかりません。

本や教科書にも書いていないでしょう。先輩のやり方を見て覚えるしかないです。その勘が働くかどうかで人生が決まってくるそうです。

「寿司を一人前に握ろうと思えば毎日練習すれば3年でマスターできるが、お客様と会話ができ、常連様になっていただくには最低10年以上はかかるよ。私も独立して一番難しかったのがこれです。」とクライアント先の社長はおっしゃっていました。

「だから寿司を握る技術だけではなく、どんなお客様が来ても話が出来る一人前の人間になって欲しいんだ」ともおっしゃっていました。

次の目標は、やはり日経新聞を読み、株価くらいは知っておくことだそうです。
でも意識の高い板さんから勉強なさっています。

店では何が大事なのか?それに気付いた瞬間、仕事の内容が変わって来ると思います。お客様志向とは、そのことを言っているような気がします。