債権額が60万円以下であれば、簡易裁判所に「小額訴訟」として、訴えを提起で
きる。これは1日で裁判が終結する。これについては、以前に、「小額訴訟と簡裁
管轄事件」として 書いたことがある。

 小額の争いについて、費用をかけずに、早く決着を付けようという趣旨で認めら
れた制度である。

 ただ、小額訴訟の提起は、一人の人が訴えることができるのは、10回以内と決ま
っている。マンションの管理費の滞納が1年に10人以上いるような場合には、この
点などは気を付けなければならない。

 しかし、一番気を付けなければならないのは、被告(相手方)が遠方の場合であ
る。例えば、会社などに対して訴える場合、本社を被告として訴えるのであるが、
本社が東京にある場合、大阪の簡易裁判所に訴えても、東京の簡易裁判所に管轄の
移送がなされることがある。

 この移送がなされると、わざわざ東京の簡易裁判所まで出向かなければならな
い。訴訟は1日で終わるとしても、これはかなりの無駄である。

 小額訴訟で、被告が遠方にいる場合、訴状の提出のときに、くれぐれもこのこと
を裁判所の書記官などに確かめてほしい。

 そこで、被告が遠方の場合、どうすれば良いのか。

 この場合には、通常の訴訟をすれば良い。通常の訴訟では、原告の住所地の簡
易裁判所で裁判をやってくれる。

 通常の訴訟は小額訴訟と比べてややこしいのではないかと疑問を持つ人がいる
が、決してそうではない。通常の訴訟でも訴状の書き方は小額訴訟と同じである。
ただ、1回で訴訟が終結するとは限らないし、小額訴訟と違って、ちゃんとした法
廷で裁判がなされるという多少の違いはある。しかし、何も恐れることはない。
小額訴訟ができるなら、通常の訴訟もできるのだ。ただ、訴訟費用(印紙代と切
手代)はわずかであるが高くなる。

 そもそも簡易裁判所は、訴額が140万円以下の事件について管轄権がある。こ
のような比較的小額の争いについて、訴訟の専門家に一々頼んでいたのでは、費
用倒れになる。
 そこで、個人でも訴訟ができるように工夫をこらしているのである。このこと
は、小額訴訟に限らず、簡易裁判所の訴訟自体に言えることだ。

 ちなみに、簡易裁判所では、弁護士のみならず、一定の司法書士にも訴訟の代
理権が認められている。このような専門家に頼めばそれなりの費用がかかる。し
かし、簡易裁判所の事件について、専門家に頼む必要はないのではないかと言っ
ているいるのだ。

 裁判所も、専門家に頼まず個人が訴訟を提起することを覚悟しているから、訴
訟の提起から、裁判まで、質問すれば、ちゃんと教えてくれる。

 わからないことがあればどんどん質問すれば良い。裁判所の職員はそれが仕事
だから遠慮することはない。

 ここで言いたいのは、小額訴訟でも、通常の訴訟でも、個人で訴訟をしようと
思えば、比較的簡単にできるということだ。

 ただ、訴状の書き方がどうしても面倒だという方は、訴状だけ司法書士などに
頼んで書いてもらえば良い。数万円の費用で書いてくれるはずだ。必ず、事前に
いくらで訴状を書いてくれるかを聞いてから頼まなければならないのは言うまで
もない。

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