<コンサル事例>

基礎化粧品(これはファンケルやDHC、再春館製薬所などをイメージしてもらえればいいと思います)は、効果効能を頭で理解する部分と、イメージや勢いで購入を決めてしまう衝動買いの対象でもあると思うのですね。

そこで、それぞれの役割を果たすツールとして、図説やグラフを多用し、成分説明から導き出される効果効能などを理解してもらうための、いわば左脳向けのカタログをつくる。そしてもうひとつ、使用前と使用後の肌の違いなどを大きな写真で紹介する右脳向けカタログを用意することを提案。

双方が補完し合い、現場のセールスを支援するツール数種がそろえば、とりあえず環境は整備されます。しかし、こんなことは普通のコンサルタントでも指導できることです。私がもっとも問題であると指摘したのは、まったく別のことでした。

販売員が辞めてしまうのは、カタログが不備だからではないのです。たしかに売上の上がらないことがリタイアの原因ではありますが、誰だって最初からポンポンと売れるわけではないですよね。

問題は、「売れない…」と悩んだときに、きちんと心のケアをしてあげられるか、という点です。つまり、回りに「私も売れなかったのよ」と語りかける人がいて、「つらいのは自分だけではないんだ」と理解できれば、もう少しがんばれるのです。

ナレッジマネジメント風にいえば、うまく販売できた成功例やセールストークの共有が「正の情報共有」なら、「私もダメだった」という失敗経験のストーリーは「負の情報共感」といえます。こちらも、双方を合わせ技として週刊や月刊で配布するコミュニケーションペーパーなどで情報発信していく必要があるでしょう。

その他も、技術面だけでなく心情面でのセミナーに参加させたり、上級のセールスパーソンにマン・ツー・マンで指導させたり、という会社側の思いやりのあるフォローがあれば、一皮むけてがんばる人がどんどん現れてくるに違いない。

人を大切にする企業風土は、一朝一夕には確立できないでしょう。それでも、トップの顔が向いている方へ、他の社員たちもだんだんと視線を向けていくものです。どうか、時間をかけて、尊敬される企業へと脱皮していって欲しいものです。