本日の日経オンラインで、モバイル業界を専門とするジャーナリスト石川温氏の「スマートフォンで米国に移った携帯業界の覇権」と題する記事を読んだ。スペイン・バルセロナで2月17日まで開かれていた世界最大の携帯電話展示会“Mobile World Congress (MWC)2011”での印象を語ったものだ。

携帯電話の基本ソフトであるグーグルのアンドロイドを搭載したスマートフォンが並び、従来型の携帯電話を展示していたのは日本のドコモと韓国のLG電子位だと言う。つい最近まで業界を主導していたフィンランドのノキアは、昨年に続きブースも出していないということだ。

米国アップルのiPhoneによって火を付けられたスマートフォンへの流れは、グーグルの基本ソフト・アンドロイドの人気によって、業界の覇権をヨーロッパから米国に完全に移すことになったと氏は見ている。IT業界に代表される昨今のビジネス界におけるDog Year化が益々加速している。

上記のことを再確認するとともに、私には石川氏の報告によって再確認させられたことがもう一つあった。それは、韓国、台湾、中国の企業の存在感が高まり、日本企業の影が薄いということだ。端末で着実に存在感を高めていたのがサムソン電子やLG電子の韓国勢とHTCの台湾勢で、基地局等の通信機器では中国の華為技術(ファーウェイ)やZTEが目立ったという。ソニーエリクソンや富士通は健闘しているようだが、パナソニックの出展は今年は一時撤退らしい。

しかし、私は悲しんでいるわけではない。むしろ、これで良いのではないかと思っている。石川氏も日本メーカーの技術力の高さが評価される時が必ず来ると書かれていたが、私は別の角度から日本企業全般について同じようなことを思った。

結局日本企業は、国内市場中心の横並びの(非)競争意識を捨てて、本当の意味でグローバル規模で戦略的に行動するしか未来はない。限られたリソースでは、あれもこれも追い求めることができないのは当然だ。これまで日本企業は力を入れる市場を国内中心に絞り込むことで対処してきたが、これからは技術や分野そのものを絞り込むことで対処していかなければならない。垂直統合型から水平統合型への移行と言われることとも関連している。

絞り込んだ自らのコア・コンペテンシーを再確認し、継続的に強化していくところにしか戦略の要諦はない。この場合のコア・コンペテンシーは特定の技術に限らず、適切な範囲で転用・応用可能な組織的能力という意味である。本来の「戦略」は、リソースが限られている状況でこそ本質が明らかになる。即ち、何かに集中するために、何かを捨てるということである。「言うは易く、行うは難し」は今も続いているのではないだろうか。

ヴィブランド・コンサルティング
代表取締役 澤田康伸