本日の昼にコンピューターに向かっていたら、新日鉄と住金が来年の10月を目途に合併というタイトルだけの速報がオンラインニュースで入ってきた。粗鋼生産量で欧州アルセロール・ミタルに次ぐ世界2位に浮上する見込みだと言う。規模を大きくしなければ、海外に製鉄所を建設するなどの負担に耐えることができないからだ。

私は、このニュースがリーマンショック以降の日本企業の変化の可能性を象徴しているように感じた。日本パソコン最大手のNECが中国最大手のレノボ・グループと資本・業務提携するというニュースが流れたのも最近だったので、いよいよ今年は「平成の開国」、つまり日本企業の本格的なというか、今度こそ本気のグローバリゼーションの始まりかと思ったのだ。

鉄鋼業界では、既に川鉄とNKKが2002年に統合してJFEホールディングズが発足しているし、世界最大手のアルセロール・ミタルもルクセンブルグのアルセロールとインドのミタルが2006年に経営統合したものだ。IBMが中国のレノボにPC部門をThinkPad等のブランドとともに売却すると発表したのは2004年末となっている。

形の上ではとっくの昔にグローバル化していたはずの日本企業だが、1990年代は1980年代のジャパン・アズ・ナンバー1時代の慢心が続き、2000年代も新興国の台頭に危機感を強めたものの国内第一主義のメンタリティーを変えることは難しかった。失われた20年がすぐに戻ってくるわけではないが、2010年代には多くの勇気のある企業が為すべきことを行動に移し始めたということであってほしい。

一言で言えば、益々加速する経済のグローバル化に対応するための戦略であるが、急がなければならないのは大手企業だけではなく、あらゆる産業の中堅企業や中小企業も同じである。特に製造業ではグローバリゼーションの影響は大きく、刻一刻と変化が押し寄せてきているのではないだろうか。

先週、在日ドイツ商工会議所主催の新年会レセプションに参加をした。そこでは、業種にもよるが、需要が縮小する日本における存在の意味や役割をどのように考え、対処するかという共通の課題があったように思う。

しかし、私が同時に感じたのは、大企業もさることながら、測定機器、精密部品、特殊材料等、ドイツの高度なもの造りを担ってきたキラリと光る中小企業の多さだ。小さなところは10名程度の人数で生き残りをかけて頑張っている。今年は日独交流150周年らしい。早くから世界で活躍するドイツ企業のプライドと執念を見たような気がした。

さて、全ての日本企業に背水の陣が敷かれていると言ってもよいのではないだろうか。何から始めるべきか、資源が限られた中ではことさら戦略が重要になる。そして、経営者の勇断が功を奏するに違いない。

ヴィブランド・コンサルティング
代表取締役 澤田康伸