今年になって最初に読んだ本は、1月5日に出版されたばかりの大前研一氏の「お金の流れがかわった!-新興国が動かす世界経済の真ルール」(PHP新書)だった。サブプライムローン問題に端を発し、リーマンショック以降に大きく進行した世界同時不況の原因を確認するとともに、今後の経済運営に対する大前氏の処方箋を知りたかったからだ。

その結果確認したのは、やはり投資機会を求めて世界中どこへでも飛んでいくホームレス・マネーの恐ろしさだった。ホームレス・マネーとは、ヘッジファンド等が運用しているような、世界中の投資機会を求めて迅速に動き回る巨大資金のことである。その恐ろしさは、関係者には異論があるだろうが、簡単に言えば貪欲さというか、節操のなさと言っても良いかもしれない。ハイリターンという目的さえ達成できれば、つまり結果さえ良ければ手段は問わないということだ。

そうなってしまっている世界経済の現状を認識したうえで、それに的確に対処するためには発想の転換が必要だ。大前氏は、グローバル経済においては、国政レベルでもホームレス・マネーの活用を考えれば、税金はあまり必要ではないと説く。

現状の正確な認識と発想の転換は常に大前氏から学ぶところであるが、個々の企業がこのグローバル経済にどのように対処すべきかは、複雑な問題だ。大企業から中小企業までそれぞれの状況や事情があり、糸をほぐすのは大変だ。

しかしほとんどの企業の場合は、ホームレス・マネーの挙動とは違い、自らのコア・コンペテンシー(核となる組織能力)を深く見つめたグローバルビジネスへのアプローチを検討することが必要ではないか。目的もさることながら、手段に重点を置いた大胆な発想の転換と堅持が必要になるに違いない。ホームレスではなく、ホームは常に存在するのだから。

ヴィブランド・コンサルティング
代表取締役 澤田康伸