平成20年度マンション総合調査(国土交通省)によると、マンションのトラブル
発生として最も多いのは、居住者間の行為、マナーをめぐるものである。実に63.4
%のマンションで問題になっている。続いて建物の不具合に係るもの(36.8%)、
費用負担に係るもの(32%)となっている(重複回答)。

 居住者のマナーをめぐるものとして、生活音、違法駐車、ペット飼育、バルコニ
ーの使用方法、共用部分への私物の放置等である。

 この中で、生活音以外の問題は管理組合の規約にこれらに関して定めてあり、そ
の違反行為の認定が明白に認定でき、管理組合で解決することが比較的容易な問題
である。

 ところが、生活音については、どこまでいけば違反するという具体的な数字で制
限できない。標準管理規約(単棟型)の第67条において「共同生活の秩序を乱す行
為を行ったときに、理事長が理事会の決議を経て勧告や是正等を行うことができる」
という規定があるが、この規定は直接騒音問題についての規定ではないし、騒音問
題についてこの規定が適用されるためには、明らかに近隣に響く騒音により近隣住
民がかなりの被害を受けた場合であろう。

 しかし、実際の生活音の争いの問題は、上の階の子供が走り回ってうるさいとか、
深夜に風呂の水を流す音がうるさいとか、ドアの開け閉めの音がうるさいとかいう
問題で、マンションの上下階の住民同士の争いである。共同生活の秩序を乱す行為
と直ちに認定できない。

 したがって、マンションの管理規約違反という問題が認定できず、管理組合が直
接関与することは難しい。

 それでも、管理組合内で話し合って解決するのが最も望ましいと思う。管理組合
の中には、当事者間の問題としてあまり関与したがらないところもある。しかし、
他人事として放置するのではなく、自分たちの問題として取り組む必要があると思
う。理事会や総会で当事者の出席の下で話し合って、マンションの快適な生活を守
るということは、居住者全員の共通の問題だということを話し合うべきである。

 先のマンション総合調査によると、管理会社に中に入ってもらうとか、警察に相
談するとか、当事者間で直接話し合うとか、様々な解決の仕方があるようだ。

 ついには、裁判沙汰になることもある。ここまでくると、お金もかかるし、判決
が出た後でも、しこりが残るだろうし、賢い解決とはいえない。

 裁判においては「受忍限度」内の騒音かどうかが争点となる。特に敏感でも、特
に鈍感でもない一般人において、当該騒音が受忍できる限界を超えたものかどうか
を判断するのである。

 しかし、裁判で判決が出たからといって、当事者が心から満足するものではない。
根本的な解決にもならない。やはり、管理組合が自分たちの問題として、管理組合
の中で解決するのがベストである。

 最近、千葉県内で、マンションの住民の発案で騒音条例ができたというニュウス
が流れた。それも一つの方法に違いない。騒音問題は全国的に深刻な問題である。

 そもそもこのような騒音問題が起こらないようにするために、マンション住民の
コミュニティの形成・充実が不可欠だ。前にもブログで指摘したように、お互いが
顔見知りであれば、少々の騒音も気にならないだろうし、当事者間で話し合って解
決することも容易にできる。

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