前回は黄土高原について紹介しましたが、私が仕事の関係で2002-04の丸2年間生活した寧夏回族自治区の一側面について紹介しましょう(部分的には紹介済みですが)。中国を理解するには、その多様性理解が不可欠と思うからです。
☆寧夏概観:北京の西方1000km弱の乾燥地帯に位置し、面積は6.6万平方キロで中国
各省、自治区の中では最小ですが、それでも日本の東北6県と略同じで、九州の1.5倍もあり、人口は600万で全国平均より増え続けています。大部分が砂漠(若干の雑草が 生えている部分が大きい)と黄土高原の一部です。私の生活した石嘴山市は自治区北端で内モンゴルに食込んでおり、風俗習慣も回族、漢族、モンゴル族三種が混合している印象があります。回族は南方に多く石嘴山市では 大部分は漢族、回族も2-3割で、モンゴル族は極僅かでした。以前にも紹介した如く、土地柄が風俗習慣を決めてしまい、多数派の漢族も寧夏風になっていると言えます。回族は人種的には漢族と左程違いはなく、イスラム教を信仰している(熱心度は個人差大)為に、イスラム風の風俗習慣と言えます。尚血統的区別である人種と民族の区別を混同する人がいますが、民族とは言語等伝統文化や風俗習慣での区分けであり、人種的区別とは異なります。
☆寧夏の北半分、且黄河流域が農耕に適した土地ですが、大部分は未開拓で地中からの塩分が表層に出ていて白く見える土地が圧倒的に広く、7-9月集中の降雨を利用すべきであるダムや調整池も極めて少ない情況です。豪雨があれば流れに身を任す「過水橋」や「過水路」がほとんどで、公道からも洪水による痕跡が沢山見られます(当地の河川は降雨量が多い時だけ流水があり、水無し川)。黄土高原や東方から移民を受入れる他、沢山の刑務所も受入れており、大理石を存分に使った立派な刑務所事務所が公道沿にあります。多くの土建工事等請け負っており、受刑者は“貴重な労働力”となっています。植樹祭の案内があり、社員こぞって参加しようと張り切りましたが、参加せずに協力費を出してくれと、実行委員会より出発直前に言われ止む無く断念したが、合点が行かず植樹予定地に行って見た。 高速道沿の南北に長い予定地には10人乃至20人のグループが沢山作業しており、全て同一の作業服の受刑者だが、何故か暗い顔をしておらず、今尚謎です。
☆ 葡萄泉:私の生活した石嘴山区の西方約10kmには、賀蘭山と言う南北に連なる 山脈(全山ほとんど岩山)の北端が位置しています。土地の人々が特別な感情を  抱いている葡萄泉を一度は見ておこうと思い立ち、タクシーで出かけたが、山脈の北側より西側に迂回し更に南下、岩路を一時間余走りやっと到着した。山の麓に直径1-5m程度の泉が7-8個散在し、僅かな湧き水があり、一本の小川に収斂し更に下方に流れているのみで、日本の山村なら何処にでもありそうなこの泉を 土地の人々は、信仰にも似た気持ちで大切にしていることが分った次第です。
☆石嘴山市は人口60万程度ですが、六つの区に分かれており、私の生活した地区は
外資(外部の省市からの意味)導入に成功し、寧夏では比較的豊で区役所は立派なドーム式会議場を作り、税務署も個別面談室を沢山設ける等贅沢な印象だった。
一方6区を統括する市役所は、40年余前建設の貧相なもので、ある時我々受け入機関である市外貿委主任に、この情況を聞いたところ「建替えるべしとの意見もあるが、莫大な費用がかかるので、殖産興業や民生安定に使用した方が良いとの意見が強く、当分古い建屋を使い続ける積りです」とのことであった。心中泣かせる話であるが、一方市の書紀は無駄な金使いをしていると、人民日報で批判されたことがある。それは私の生活・仕事の地点から50km程度南下した石嘴山市南部にある沙湖と言う、現地では「塞北の江南」と言われる観光地に過大な金を使い、国の管理に属する黄河の水を勝手に流用していると言うものだった。周辺は砂漠であるが、東西南北夫々数キロの小さな盆地に降雨があれば湖になるが、半年以上降雨のない乾燥期には水位が極度に下がるので、黄河の水をポンプで引き込み水位を保っている。この湖には所々芦の集中植生があり、水鳥や渡り鳥も多く、モーターボート、ロープウエイ、駱駝への騎乗、砂による塑像展示等娯楽施設も豊富にあります。国からの間接的な圧力にも拘らず、住民等の強い支持により一大観光地に変貌している。内モンゴルや遠方から観光バスを連ねての来訪者も多い。尚書紀は40歳前後で、他の幹部も同様に若く、北京の中央政府に反発し、地域住民第一を貫いている施策は他にもあり、今にして思えば大阪の橋下市長を彷彿させる。中国の地方自治体もいろいろである。
☆寧夏の周辺は黄砂(現地では沙塵暴と言う)の発生源の一つで、短時間の局部的な
黄砂は日に何度も発生することがあります。そこで女性は殆どスカーフを持つか大きいサンバイザーの付いた帽子をかぶっている。黄沙が近づいたら、スカーフで髪の毛のみならず顔全体を保護するか、サンバイザーを下ろして黄沙の通り過ぎるのを待つのである。 日本人の想像する黄沙と言うより、つむじ風か横殴りの竜巻の様です。
この石嘴山区では、年中ほとんど西風が強く、街路樹(ポプラやプラタナスが多い)は大部分、東側に傾斜しており直立しているのはほとんどありません。
社員との懇親会で女子社員より、「此処には美人が少ないと言われるけど、年中こんな気候なのだから美人になりようがないでしょう!だから若者はみんな華南、華東
地区に憧れるのよ!分ったら文句言わずに呑みましょう!」と、言われたこともある。
柳沢経歴 http://www.nakatsu-bc.co.jp/komon/komon-2.html
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