香港での民主化闘争が長期戦になってきているが、基礎的事項があまり伝えられていないのは残念である。留意すべき事項に就いて若干提起したい。
1、 一国二制度が形骸化しつつあることに、多くの香港の人々は危機感を持ち反対闘争が継続しているが、元々この制度は定着し難い欠陥があった。香港が中国の支配下に入ってもこのイギリスとの国際的協定により、民主主義体制が保持され、少なくとも50年間は保障されると思い込んだのが誤りである。香港情勢に対する批判に対して中国政府は、内政干渉であるとして反論するが、これには一面の道理がある。中国の憲法では、中国共産党が政府を構成するだけでなく、あらゆる政党の指導機関と規定し、その根本思想はマルクスレーニン主義、毛沢東思想に依拠すると規定している。共産党員は全人口の7%未満の9,000万人程度であるが、この人達が実質的に中国全土の政治を支配している。市町村レベルの選挙では多党化が認められていると云うが、立候補するまでは自由であるが、選挙前に思想調査がされて、憲法規定に合致しているかどうか、即ち党員ではなくても共産党の指導を受けることを容認するかどうか審査されているのである。よく日本の報道では、中国では法令が無視されていると批判されることがあるが誤りである。7%の“党員の思想”そのものが、憲法規定そのものである。更に言えば心中では自由民主主義の方が良いと信じている党員が多いのも事実である。
2、 香港問題を考察する時、中国政府の主張にも弱点がある。以前南アフリカ共和国は、厳しい国際的批判にも拘わらず、ひどい人種差別(アパルトヘイトと云う人種隔離政策を採用)をし、黒人のみならず黄色人種もカラード(有色人種)として差別されていた。尚、日本人は名誉白人と言われ、白人同様の待遇を受けたことがある。反対闘争を指導し、長期間拘留された黒人のマンデラ氏が最後には解放され、自由を獲得したばかりでなく、自由選挙を実現し大統領に就任し人種差別政策はなくなった(1994年)。彼の偉大なところは従来支配階級を構成していた十数パーセントの欧州系白人に対する報復政策を採用しなかったことである。南アの事例を引用したのは、実は中国政府もアパルトヘイトは国境を越えた人類共通の悪しき障壁であるとして、反対し続けたものである。この論法を採用すれば、党員が10%にも満たない政党が政府を構成し、反対政党の結党や反政府活動を禁止する様な憲法を保持すること自体が、国境を越えた、21世紀の人類共通の悪しき障壁であると言えよう。
3、 実は斯様なことは、既に鄧小平氏は百も承知だったと思われる。彼が1978年末に「改革開放」の大号令を発した時に、社会主義政策に反する市場経済政策や外資受け入れ政策を採用することに関して、「白猫でも黒猫でもどちらでも構わない。ネズミを捕る猫は良い猫だ」と、主義主張などイデオロギーは何でも構わない、国を豊かにし、民を豊かにする政策なら何でも良いと言ったに等しい。更に「四つの小龍に学べ」として、香港、シンガポール、台湾、韓国等かなりの長期間政治的自由は制限されたが、経済活動には自由を認めて資源もないのに、当時中国より遥かに豊かな彼らに学べと主張したものである。更に言えば、香港やマカオ返還に関しては「一国二制度」の期限を50年としたのも、50年もすれば、政治体制上の相違等なくなっているだろう、即ち自由民主主義社会になっているだろうと予言したようなものです。
4、 且って毛沢東は人民大衆の闘争は「闘争、失敗、闘争、失敗、、、最後には勝利」と論断したものである。これも毛沢東思想の一部でもあるので、現在の中国政府の政策はやや近視眼的であり、毛沢東思想に反しているとも言えよう。
  尚、新聞報道やテレビニュースでは人種問題と民族問題が必ずしも識別されておらず、更に人種も単純に白、黒、黄の三つには分けられないことを次回提起しましょう。

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