「東日本大震災:千葉・焼却灰保管問題 手賀沼処理場、住民が搬入阻止」という記事が毎日新聞に報じられている。
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20121221dde041040057000c.html

周辺自治体の都市ごみ焼却灰のうち放射性セシウムのレベルの高いものを,下水処理場の敷地内で保管することになったが,地元住民が反対して実力阻止に及んだというものだ。

焼却灰を搬入しようとする側も,それを阻止しようという側も,それぞれ言い分はあろう。しかし,双方とも自己の主張をするものの,相手の主張を聴いたのだろうか。まともなリスク・コミュニケーションはあったのだろうか。恐らくなかっただろう。あれば,こんなマスコミにとって美味しいイベントなどにはならないはずだ。

双方が,放射線リスクの本質とその大きさを理解した上で,相談すれば,自ずと最適解が得られたはずだ。だが,我孫子市の市議会などは,早々に「断固反対」の決議をしている。情報や知識が不足している議会は,自らの不足を認識せず,あらたな情報や知識を獲得することを拒否している訳だ。

環境リスクや健康リスクというものは,オール・オア・ナッシングで考えていては何も進まない。環境リスク・健康リスクを制御したいならば,まずはステイク・ホルダーが知識を共有し,話し合いを持つことだ。そうすれば,リスクの本質を理解し,都市ごみ焼却灰の放射線による健康リスクなど実は無視できるほど小さいことがわかるだろう。その上でならば,地元の懸念を緩和するための様々な方策が選べるようになる。道路清掃や道路散水を強化する;自治体の清掃車を軽油ディーゼルからLPG,CNGに切り換える;地下水を心配する地域に水道を敷設する,そんな程度の対策で,焼却灰受け入れによる増分を相殺してお釣りが来るほどのリスク低減が達成されたはずだ。