専任の取引主任者の数の問題

 模擬試験の問題やテキストなどで、「業務に従事する者の数が本店21名、
支店12名、取引を行う一定の案内所に6名の場合は、本店に5名、支店に
3名、案内所に1名以上の専任の取引主任者を設置しなければならない。」
している。

 これ自体は全くその通りで正解である。それでは、この業者の業務に従事
する者の数は全員で何人いるのかという
と、21名+12名+6名=39名と
考えているようだ。つまり、案内所の
6名について、「本店又は支店に従事す
る者ではなく、一定の案内所に従事
するものと考えられる。」というのである。
本店にも支店にも所属しない案
内所があるというのである。

 しかし、本店や支店(事務所)から独立した案内所等というものはありえ
い。なぜなら、従業者名簿は事務所ごとに備えるということになっている
が、
案内所等の業務に従事する者については、その者の所属する事務所(本

又は支店)に従業者名簿が置かれているからだ。事務所の専任の取引主任
者の数を計算する場合、その事務所に所属する案内所の従業員も計算に入
なければならない。もし、本店にも支店にも所属しない案内所等があると
たら、そこの従業者の名簿はどこに備えることになるのか。

 だから、ここでいう案内所は、本店か支店の事務所に所属すること及びそ
の6人は、所属する本店か支店から出向(派遣)している者として考えるべ
きだ。問題文にもその旨を明らかにしなければ誤解を生じるおそれがある。
つまり、支店(又は本店)には、取引を行う一定の案内所があり、支店から
6名が出向(派遣)しているということを明確にすべきである。そうすると、
の業者の従業員は、21名+12名(案内所の6名を含む)=33名とい
うこ
とになるはずである。そのうえで、冒頭に掲げたように、本店に5名、
支店に
3名、案内所に1名以上の専任の取引主任者が必要ということになる。

 以下に簡単な例で説明すると、一つの事務所に業務に従事する者が12
いる宅建業者がいるとする。専任の取引主任者は、最低3名必要である。
ところが、この業者が取引をする案内所を設けて、事務所に5名残し、7
を案内所に出向(派遣)させたとする。

 この事例では、事務所に3名の専任の取引主任者が必要であることに変
りはない。案内所の7名も事務所の従業者に入るからだ。そして、取引す
案内所を別個に設けたので、さらに、そこに1名の専任の取引主任者を
設置
しなければならなくなる。よって、合計4名の専任の取引主任者を置く
必要
がある。

 案内所を事務所に所属しない独立のものと考えると(この考え自体があり
得ないのであるが)、この業者は、事務所に1名、案内所に1名、合計2名
の専任の取引主任者を置けばよいということになる。しかし、案内所を設け
ることによって、逆に、専任の取引主任者の数が少なくてすむという結果に
なる。それは、理論としてあり得ないことであり(この業者の全従業員は12
名いるのだ。)、また、脱法(案内所等に従業者を多く所属させ、専任の取
主任者を少なくてすむようにする)に利用されるおそれがあるからだ。

 事務所(本店・支店)と案内所等の違いは、そこに契約を締結すること
できる代理人(政令で定める使用人)がいるか否かである。だから、案

所等の案件に関する契約は、その案内所が所属する事務所の政令で定
る使用人が業者を代理して契約することになる。
 このことからも、案内所等は事務所に所属するのであり、事務所から独
立して存在するものではないということが導かれる。

 冒頭の問題の解答は、それ自体は誤っていないが、出題者がこの業者
従業者の数を21名+12名+6名=39名と考えているなら、その考え
は誤りである。