中国は今にも崩壊しそうだとの論調が多くなっている日本であるが、そう簡単には崩壊しそうにはないと言える。1966年後半から10年も続いた文革(文化大革命と称された)時代にも、私は駐在や出張形式で何度も中国国内で生活をし仕事をした。当時の中国は経済力も弱く諸外国との公的交流は極めて少なく、アルバニアとの交流の情況が頻繁に報道された程であった。それでも中国は崩壊しなかった。1989年4月15日から始まった胡耀邦追悼集会が民主化要求デモ、座り込み等に発展し、遂に6月4日には天安門前広場の悲劇に発展したことがあり、一時日本を含む欧米諸国から経済制裁を受けたことがあるが、中国は崩壊しなかった。但し大きな変革が起きないとは言えないであろう。
1、 元々労働者等一般大衆の立場に立ち、彼等の生活を重視し平等を旨とする社会主義諸国は殆どすべて時の経過と共に変質し、労働者の代表者だったはずの党や政府の幹部は支配階級となってしまい、30年前にはソ連や東欧諸国は不十分ながらも民主主義体制へと転換したが、崩壊した訳ではなかった。
2、 中国では他国より批判される前にも既に共産主義や社会主義を否定する論調及び措置が採られた。鄧小平は40年余前に改革開放政策と称して市場経済政策を採用し始めた時に、
「白猫でも黒猫でも構わない。ネズミを捕る猫は良い猫だ」と公言したが、これはその証拠の一つである。更に当時一人当たりのGDPでは中国より遥かに上まっていたシンガポール、香港、台湾、韓国を「四つの小龍」と称して、彼らに学べと指導した。その結果国全体としては、非常に豊かになったが、全体主義体制のみは維持される一方、大資本家や特権階級が生まれてしまった。彼らは権貴族と称されている。日本では給与の一か月分程度の贈収賄でも罪になり、政争の種にもなるが、中国で摘発される案件は桁違いに大きく、何億、何十億円レベルとなる。「権力は腐敗し易く、絶対的権力は絶対に腐敗する」には例外がないことを教えている。
3、 香港問題が顕著になっているが、少数民族の中のウイグル族やチベット族の取り扱いが問題であろう。もっと大きな問題は貧しい農村問題だが、何故か日本のマスコミは中国の農村問題をほとんど取り上げない。都市部近郊の農村が如何に豊かになったかは取り上げられたが、これは農村部全体の一部である。中国からの来日観光客が辺鄙な山村に行き、又は通過した際に、日本ではあまり生活レベルに大差ないのを目撃し驚いている。私が仕事の関係で見聞した山西省や寧夏回族自治区の農村は北京や上海との所得格差は十倍以上であった。20年も前のことだが、現在どれ程改善されているだろうか?!
4、 上述した如く今後の問題は思想問題と云うより、生活や社会問題に就いて、自由な意見表明
や結社の自由が保障されているかどうかが大きな問題になってきている。少数民族問題では少数民族自身の伝統的な風俗習慣が保護されているかどうか次第で、社会的安寧が保たれるかどうか決まるとも言える。中国国内の治安状況が悪化すると、対外的政策が攻撃的になる傾向があるので、対日政策も例外ではないと言える。
5、 もう一つ重要なのは、中国は(韓国も)折に触れ「日本は真剣に歴史に学べ」と主張するが、彼等の歴史を学ぶ姿勢こそ問題であろう。日本の国防問題等世界的基準で見れば、むしろ“歴史に学び過ぎ、羹に懲りて膾(なます)を吹く”状態にあることは一目瞭然である。一方中国や韓国の歴史の学び方はリベンジ主義であり、昔の日本や欧米諸国が覇権主義的な自国第一主義だった誤りを学んでいない。それが証拠に中国は南シナ海でフィリピンやベトナムの意向を無視して、岩礁地帯を埋め立て巨大な軍事基地をつくり、スリランカや中東のジブチに軍事基地を造成し、東シナ海では国連の調査団が石油や天然ガスがありそうだと発表するや、其れまで自国の地図でも日本領と明記していた尖閣諸島を自国領と言い始めてしまった。

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