幹部教育の要諦の第4項では、<品質向上の基本:5S活動や「品質を作りこむ」運動は、日本での事例ではなく、中国での誰でも分かる事例で以って指導しよう>と述べました。「日本での事例ではなく」と強調したのは、中国人の自尊心を考慮し、更に「日本と同等レベルは所詮無理だよ、とか日本人ほど給料貰ってないよ」との言い訳が中国人の 心中に発生するのを防ぐ為です。次に中国での事例や参考事項を紹介しましょう。
1.1978年末に改革開放の大号令が下ると、待っていました、と言わんばかりに 中国人の潮流が金銭至上主義の方向に流れ始めました。モラルの荒廃を心配した全国婦連や総工会が中心になり、政府がバックアップして1981年より、「五講四美」が始まりま したが、熱心だったのはその後5-6年だったと思います。現在も毎年3月は運動促進 月間のはずですが。「五講四美」の「講」は「重んずる」とか「大切にする」意味ですが、「五つの気配りと四つを美しく!」程度の意味。五講とは文明(文化的、知的)、 礼貌(礼儀作法)、衛生、秩序、道徳(モラル)で、四美とは心霊(心持ち)、語言  (言葉)、行為(立居振る舞い)、環境の四つですが、更に詳しくはネットでも検索 可能で、中年以上の中国人なら誰でも知っている筈ゆえ、聞いてください。これを辛抱強く推進すれば5S活動を補強することになるでしょう。
2.職場には解放軍入隊経験者が一人や二人は居るはずです。解放軍内部の規律遵守や 整理整頓は、社会が混乱した文革時代でも立派でした。私も北京在住の外国人    “紅衛兵”とし、広州の白雲部隊(駐屯基地)や天津近郊の楊村部隊を都合4回見学し たことあり、現場で確認しました。入隊経験者に話をさせ、解放軍に学べ、と言うのも 効果あるでしょう。
3.伝統的玉器や刺繍工場も何度も見学したことがあるが、一人ひとりの作業員が品質に強い責任感を持ち仕事をしています。給与等特別な待遇があるわけではないが、   やり直しがきかないことと、仕事への誇りです。これも「品質を作り込む」実例として 利用可能でしょう。
4.デパートの売り場も最近では随分綺麗になりました。特に、一階の化粧品売り場には、ゴミ一つ落ちていないでしょう。5S活動とは言わなくても、整理整頓も徹底されているでしょう。その他、中国人社員に良い事例を探させて、社内会議などで発表させ、 更に自社への導入も検討させ、実行させるのも良いでしょう。やる気や責任感醸成に大いに役立ちます。「信賞必罰」の具体化として若干のご褒美と、場合により罰則を課す必要もあるでしょう。

柳沢経歴 http://www.nakatsu-bc.co.jp/komon/komon-2.html
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