最近の中国の社会状況に対する各種報道やネット情報は、私をして文革時代に北京で教えられた毛沢東語録の一節を思い出させている。それは「人民は解放を求め、民族は独立を求める。これは世界的な潮流であり如何なる勢力もこれを制止できない。解放闘争や独立闘争は単純ではなく、曲がりくねった道程をたどり、幾多の犠牲を払い何度も失敗した後に初めて成功する。」との趣旨であったが、確かに世界を見渡せばこの様に推移している。
中国も例外ではなかろう。

 24年前の1989年6月4日の天安門事件の暫く後で、国家安全部にいた古い友人から、中国の政治改革に対する参考意見を求められたことがあるが、その時2点に就いて提案した。
① 規律委員会を全人代に帰属させ、党の上位に位置づけすること。党内の規律委員会の活動は、自浄努力であり、その成果には限界がある。
②  普通選挙を実施すること。自由な立候補と自由な選挙を実施して、全人代の代表を選出すべきである。
① に就いては、まったく考慮されていない様だが、②については、当時既に末端から
実施して段階的に上級に上げていく予定と聞いたが、その後の経過を見ると確かに村や郷鎮段階、都市部では居民委員、社区委員、区人代代表の選挙でかなり実施されている様だが、どうも自由選挙にはなっていない様である。と言うのは一定の推薦人があれば自由に立候補出来るが、候補者が多過ぎると選挙人が候補者の人物評価が困難だとして、“予備選”
があり、候補者を絞ってしまう。この段階の状況が一般庶民には不透明であり、真に自由な選挙になっているかどうか、判然としない。
 国家だけでなく団体、会社等を含む如何なる形式の組織であろうと、十分なチェック体制を備えずに、指導管理機構に権力を持たせれば腐敗堕落し易く、絶対的権力は絶対に腐敗するとも言われるので、中国でも政治改革は避けられないであろう。中国国内でも改革では不十分で、“転換”が必要だとの主張もある由。

 天安門事件の時は、北京にある日本大使館より一時的に日本に退避せよとの勧告が出され、臨時便で一時帰国したが、当時私が勤務していた会社の社長(彼は1949年に新中国が成立した直後から、中国と交流して来た先駆者だった)より、「直ちに北京に戻れ!第一線の司令官が将兵とも言うべき部下を放置して帰国するとは何事か?」と叱責され、3日後には北京に戻ったことがある。「中国の一般大衆や自分の部下達を信用できるのかどうか、大切に思うのかどうか」が、より一層重要であると言う事を教えられた次第であった。

 私の中国の友人達は社会的には、権貴族(特権階級)ではないにしても、社会的上層階級に属するのは間違いないが、それでも貧しかったが昔の方が良かったと言う。普通の日本人には想像もつかない程の極端な所得格差、環境汚染問題、官民癒着による汚職問題等で
将来に対する不安感や日中関係の悪化への心配が原因であろう。日中は是非とも諸々の困難を乗り越えて、協力関係を深め広げていければと念願する。観光旅行で来日する中国人は、実際の日本を自分の目と耳で見聞して、一様に驚いている。相互理解がまだまだ不足していると痛感する。日中間には歴史問題に止まらず、互いに学び合う余地が沢山ある。
 


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