中国での工場では、かなりの設備を現地調達している日系企業も少なくないと思われるが、設備に不具合が生じた場合の売り手側対応が不十分で苦労されている企業もあるのではなかろうか。私は1961年以来30年余対中設備輸出をしていたが、中国での一般的サービスの悪さとは裏腹に、中国のユーザー特に輸入窓口の国営の貿易公司    (コンス)の方々より各種のクレームを受けて相当鍛えられた。改革開放が始まり定着する迄中国の輸入部門は、全て対外貿易部直轄の貿易公司のみであり、全てのスタッフはエリートばかりで、世界各国の取引経験から学んだ、買い手(ユーザー)にとって最も有利な条件を次々と繰り出していました。この限りに於いて、正に「お客様は神様」でした。これらの経験は、JICAの技術協力の現地プロジェクトで勤務し始めた1996年1月以来、勤務した日系企業での現地調達で大変役に立ちました。以上実施した経験を要約し参考版として紹介しましょう。
 特に保証期間内に発生する設備の不具合による損失、即ち「経済損失」に対しては、ほとんどの中国人幹部は、適切な意識を有していないので、彼等を教育する必要がありますが、日本式方法とか日本式概念であると思うと、彼等は心中躊躇する場合もあるが、  上述の如く中国中央政府直轄の貿易公司では昔から採用していた方法として紹介すれば、心理的抵抗感は少なくなるでしょう。下記の如き規定を策定し実行することです。
実情を考慮し文章を若干修正し、購入契約書の付属文書としておくのも良いでしょう。

総則:設備故障による損失は修理費用のみならず、時には関係する経済損失が膨大になることを念頭に、設備故障の場合には正確に記録、証拠を保存し、経済損失を漏れ無く計算し、設備の供給側に必ず補償させること。設備部や保全部他関係者は積極的に対処し、消極的であれば人事考課に反映させる。故意に必要作業を怠ったものは、会社に  損失を与えたものと認定し、就業規則に照らして処罰する。尚当然ながら、購入契約に際しては、保証期間満期後支払うべき保留金は10%程度とすること。

1.直接損失:故障設備が原因で直接損した生産対象物を計算する。故障から正常に
回復する迄の時間に、一時間当りの本来の生産量及び出荷価格を掛算し、金額を出す。

2.不良品損失:設備の故障や不具合により不良品を生産した場合は、良品を生産した場合との価格差に数量を乗じて金額を算出する。

3.工数損失:修理に従事した又は協力した人数と時間に平均給与を乗じて算出する。

4.財物損失:修理に自社の材料や設備・機器を使用した場合、材料費及び時間当りの
 減価償却費に所要時間を乗じて、合計金額を算出する。

5.影響損失:設備故障により他の設備や工程、生産に悪影響があった場合も漏れ無く計算する。例えば、設備故障により関連工程の生産が30%低減した場合は、生産物の
時間当り生産価格に影響を受けた時間を乗じて算出する。

6. 何かと理由を付けて、この経済損失金支払いを拒もうとする売り手側企業もあるので、その場合は保留金より控除し、保留金では不足の場合は別途請求する。
柳沢経歴 http://www.nakatsu-bc.co.jp/komon/komon-2.html
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