1970年代初頭の北朝鮮は、工業面では韓国より勝るが地勢や気候面で農業は劣勢にあるが、飢餓に苦しむ庶民が発生するなどとは信じられなかった。工業面での優勢は戦前日本の投資したものが物的、人的に残っていたことも大きな原因であった。当時軍事面ではアメリカの支援のある韓国が優勢にあると見られており、北朝鮮の実態は防御的であると見られていた。
1、 ある時土日を利用して板門店参観が手配され、一泊二日のバス旅行となった。ピョンヤン郊外の路上で道路工事の様子を見て驚いた。十人近い作業者が手作業で仕事をしているが、その近くで5-6人がアコーデオン等簡単な楽器で軽快な音楽を演奏していた。日本人にとっては奇妙な様子に見えたので、少々バスを停車して貰い、その様子を見ると共に案内人に、演奏している連中も作業に加わった方が、工事は速く進むのではないかと、質したところ、「いや、応援団付きの方が効率が良いのだ」との説明があったが、今もって不可解な気がしている。
2、 更に畑の中や荒れ地らしきところに沢山の高射砲が設置されており、砲身が10m近くはありそうに見えたが、どう見ても安定性に欠け、襲撃してくる敵機目がけて発射しても上下に振れて、とても命中しそうにはないと素人目にも思えた。途中開城に一泊したが、以前から取引があり、案内人とも親しい関係にある商社の人達は、ドルショップで買って持参したワイン等を振舞ったので、彼達はご機嫌であった。
3、 板門店では高台にある“招待所”に通され、軍事休戦ラインを見下ろすような状況で見物したが、予想通りの説明があり、日本語版のパンフレットを配布された。その小冊子は今も保存している写真集で、米軍が再三に亘り軍事休戦ラインを犯したが、その都度北朝鮮軍に撃退、又は捕らえられたとか、北側は如何に豊かに発展しているかと言うのを紹介したものである。
4、 別の休日に博物館見学が手配された。古代からの展示であるが、主要部分は朝鮮戦争に関する展示であったが、100万人とも言われる中国からの義勇軍の参戦やソ連からの膨大な兵器の援助があったにも関わらず、全て自力で戦ったことになっており、説明員に事実と異なるのではないかと質問すると、「別に問題ありません。中国人やソ連人の参観がある時には、必要な展示物を展示できるように常時準備されています」と淡々と説明されたのには驚いた。又別の日曜日、地下宮殿と自慢する地下鉄見学に行くので、ホテルロビーに午前8時に集まるよう連絡があったので、その通り皆で集まったが、何時まで経っても案内人が来ず、みんなイライラしていると、9時ごろになって「ああ、地下鉄見学は中止になったよ!じゃあね~!」とのこと。怒り心頭ではあったが、こんなことは良くあることだよとの先輩諸氏の説明で止む無く自室に引き上げた次第。
5、 サーカスも見せられたが、7割は何処の国でもやるのと同じようなものだが、その他は一見強そうに見える米軍だが、北朝鮮軍によりコテンパにやっつけられ様子を面白可笑しく演技しており、観衆の笑いを誘う出し物となっていた。中国の映画やテレビドラマに出て来る旧日本軍(昔は国民党軍だった)と同じような演出であり、事実であるかどうかよりは独裁体制維持のための道具となっていることを示していた。
6、 以上の如き状況下にあって、大変感心することがあった。それはホテルの廊下ですれ違う女性スタッフのマナーであった。即座に脇に身を寄せ立ち止まり、軽く会釈して客を通してから又歩き出す姿だった。男勝りの女性が多かった中国とは大違いで忘れ難い記憶となった。
ミサイルや核開発面では大きな発展を遂げた近頃だが、国家財政面では極度の偏重を来しているのは間違いなく、一般大衆の福祉面へのしわ寄せがひどそうである。


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